研究課題/領域番号 |
16H04707
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
朝長 毅 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクトリーダー (80227644)
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研究分担者 |
西尾 誠人 公益財団法人がん研究会, 有明病院 呼吸器内科, 部長 (00281593)
藤田 直也 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター, 所長 (20280951)
片山 量平 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 基礎研究部, 部長 (60435542)
長山 聡 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医長 (70362499)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リン酸化プロテオーム解析 / 薬剤耐性機序 / 大腸がん / 肺がん |
研究実績の概要 |
本研究では、1.大規模リン酸化プロテオミクスとインフォマティクスを用いた網羅的キナーゼ活性解析により、薬剤抵抗性の機序の解明を行い、2.その方法を肺がん、大腸がん患者由来の培養細胞株やマウスXenograftモデルに応用し、薬剤抵抗性克服及び患者ごとに最適な治療法の提案を行う。 平成29年度は、昨年度構築した網羅的キナーゼ活性解析法を用い、大腸がんに対する分子標的薬セツキシマブ、肺がんに対する分子標的薬エルロチニブの薬効予測因子群の同定および薬効耐性克服法の開発を行った。具体的には、セツキシマブ、エルロチニブに対してそれぞれ耐性を示す既存の大腸がんと肺がんの細胞株について、独自の前処理法と高感度質量分析計を用いたリン酸化プロテオーム解析を行い、同定された3万種類以上のリン酸化サイトについて、独自のバイオインフォマティクスを用いて、網羅的にキナーゼ活性を推定した。薬剤耐性群で共通して高値あるいは低値を示すリン酸化基質およびそのキナーゼが薬剤耐性関連因子である。 次に、薬剤耐性群で共通して高活性を示すキナーゼ群は薬剤耐性の原因となっている可能性があるため、薬剤耐性細胞株に対してそのキナーゼ阻害剤で処理またはそのキナーゼのノックダウンを行い、薬剤耐性の機序について検討した。その結果、SRC-PRKCDの活性化が大腸がんのセツキシマブ耐性に関与していることが明らかとなった(Abe et al, Sci Rep 7, 10463, 2017)。 上記の解析を患者由来細胞に応用するため、これまで大腸癌192症例の切除標本から、正常大腸粘膜および癌組織を採取、また、非小細胞肺がん患者127例から生検組織を採取し、それらの臨床検体を用いて大腸がん細胞株(20株)と肺がん細胞株(10株)を樹立した。PDXモデルに関しては、3株については継代に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度構築した網羅的キナーゼ活性解析法(Abe et al, J.Proteome Res. 16, 1077-1086, 2017)を用い、既存の大腸がんと肺がんの細胞株について、大腸がんに対する分子標的薬セツキシマブ、肺がんに対する分子標的薬エルロチニブの薬効予測因子群の同定およびキナーゼ阻害剤やノックダウン実験による薬効耐性克服法の開発に成功した。このことから、申請者が開発した網羅的キナーゼ活性解析法は、患者由来細胞やPDXモデルにも十分応用可能であると考えられる。 これまですでに、大腸がん、肺がんの臨床検体から、患者由来細胞(大腸がん細胞株(20株)と肺がん細胞株(10株))を樹立しており、それらの細胞株を用いたリン酸化プロテオーム解析および網羅的キナーゼ活性解析法をすでに開始している。
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今後の研究の推進方策 |
1.肺がん、大腸がん患者由来の培養細胞株とXenograftモデルの作製:引き続き患者由来細胞の培養細胞株とマウスXenograftモデルの作製を行う。肺がんでは、エルロチニブに代表されるEGFR阻害剤療法の対象となるEGFR変異陽性症例及びクリゾチニブなどのALK阻害剤療法の対象となるALK融合遺伝子陽性症例、大腸がんでは、セツキシマブ等の抗EGFR抗体療法の対象となるKRAS変異陰性例それぞれ数十例を目標とする。 2.患者由来細胞株及びXenograftモデルを用いた網羅的キナーゼ活性解析法による薬剤抵抗性に関わる因子の同定:患者由来細胞株及びXenograftモデルを使って、網羅的キナーゼ活性解析法を用いた薬剤耐性に関わる因子の同定を行う。 3.患者由来細胞株及びXenograftモデルを用いた薬剤耐性に関わる因子の検証:上記で同定されたキナーゼに関して、キナーゼ阻害剤を用いた検証を行う。キナーゼ阻害剤で増殖に影響がみられた場合でも、その効果がキナーゼ阻害剤のオフターゲット効果による可能性があるので、その因子についてRNAiによるノックダウンにより確認する。
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