研究課題/領域番号 |
16H04710
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷口 博昭 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (90563289)
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研究分担者 |
長門石 曉 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (30550248)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 薬学 / 遺伝子 / トランスレーショナルリサーチ |
研究実績の概要 |
PRDM14遺伝子産物は腫瘍に幹細胞性、薬剤耐性、遠隔転移等の形質を付与する。また、PRDM14遺伝子産物は胚性幹細胞や原子生殖細胞の一時期を除くと正常の組織には発現しない。そこで、PRDM14遺伝子産物と相互作用する蛋白質を見出し、最終的にそれらの相互作用を阻害することにより、副作用の少ない抗腫瘍効果を発揮する低分子化合物のスクリーニング系の樹立に繋げる。 PRDM14遺伝子産物と相互作用する蛋白質の候補が、初年度の免疫沈降法-LC/MS法の組み合わせにより得られていた。今年度は、蛋白質相互作用の検証を非細胞系の分子間相互作用解析システム Biacore、および、生細胞内での検証としてFRET法の変法であるNanoBRET 法によりPRDM14と相互作用するタンパク質の同定を行った。 乳癌細胞においてHalo-PRDM14を発現、プルダウンおよび質量分析により13の相互作用蛋白の候補を得ていた。さらにCo-IP法によって2つの候補GRP78およびHSP90aが相互作用の相手として確認された。 表面プラズモン共鳴法による分析(Biacore)により、これら2つのタンパク質がPRDM14と直接相互作用することが判明した。NanoBRETアッセイにより生細胞内でこれらの蛋白質がPRDM14遺伝子産物と実際に相互作用していることが判明した。さらに、PRDM14発現の抑制とHSP90阻害剤やGRP78阻害薬との併用で、がん幹細胞性と関連のあるCD24-CD44+細胞およびSide Population(SP)細胞の割合が阻害剤単独に比して有意に減少することが判明した。これらの結果によりHSP90, GRP78による腫瘍形質維持にPRDM14遺伝子産物が深くかかわることを示された。これらのNanoBRETアッセイ系をスクリーニング系に応用できる可能性を模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PRDM14遺伝子産物と相互作用する蛋白質の候補が、初年度の免疫沈降法-LC/MS法の組み合わせにより得られていた。これらの候補の中で検証を進め、ポリコーム遺伝子産物とPRDM14遺伝子産物の結合、さらに、ヒートショックプロテインとPRDM14遺伝子産物の結合に関して、表面プラズモン共鳴法による分析(Biacore)による解析、NanoBRETアッセイによる生細胞内での相互作用の有無を確認し、ヒートショックプロテインに関しては、さらに結合に関する意義をがん幹細胞性の表現型を基に解析した。具体的には、乳癌細胞においてIP-LC/MS法により得られたPRDM14遺伝子産物と相互作用する蛋白質の候補をさらにCo-IP法によって絞り込み、PRDM14遺伝子産物と相互作用する蛋白質としてGRP78およびHSP90aを同定した。表面プラズモン共鳴法による分析(Biacore)により、これら2つのタンパク質がPRDM14と直接相互作用することが判明した。NanoBRETアッセイにより生細胞内でこれらの蛋白質がPRDM14遺伝子産物と実際に相互作用していることが判明した。さらに、PRDM14発現の抑制とHSP90阻害剤やGRP78阻害薬との併用で、がん幹細胞性と関連のあるCD24-CD44+細胞およびSide Population(SP)細胞の割合が阻害剤単独に比して有意に減少することが判明した。これらの結果によりHSP90a, GRP78による腫瘍形質維持にPRDM14遺伝子産物が深くかかわることを示された。それらの結果を論文報告している。また、プロテオアレイによるスクリーニング結果で得られた新規の相互作用蛋白の候補に対して、表面プラズモン共鳴法による分析(Biacore)による解析、NanoBRETアッセイにより生細胞内での相互作用の有無の検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
スクリーニング結果で得られた新規の相互作用蛋白の候補に対して、表面プラズモン共鳴法による分析(Biacore)による解析、NanoBRETアッセイにより生細胞内での相互作用の有無の検証をさらに進める。 また、すでに結果が得られている相互作用に関して、ハイスループットスクリーニング系(HTS)の樹立が可能か検証を行う。まずは、既存のHSP90阻害剤やGRP78阻害薬との評価はin vitroで実施しているが、相互作用に影響するものかどうか、(Biacore)による解析、NanoBRETアッセイで検証しコントロールとして使用できるか評価を加える。 上記の表面プラズモン共鳴法によるHTSはすでに取り組まれている報告があるため、生細胞でのNanoBRETアッセイによるHTSを検証する。現段階では非常に高価になること、また、低分子化合物を同時に多検体処理する方策が必要になることが反応系の体積を減じる等の工夫で検証を進める。 系が樹立した場合、試験的ではあるが化合物ライブラリーとの組み合わせで当該する蛋白質相互作用を阻害する活性を有する低分子化合物の候補を得る。その候補が得られた場合、in vitroでの効果、効果発現濃度等を検証した後、in vivoでの評価を目指す。
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