研究課題
分担研究者より免疫チェックポイント阻害抗体で治療し抵抗性になった患者の腫瘍サンプルを入手した。この組織を細切しNOD-SCIDマウスの皮内に移植してPDXマウスを作成した。腫瘍体積が約300 立法ミリメートルになった時点でHVJ-E(2000 HAU)を2日おきに腫瘍内に投与した。投与は20回続けられた。抗PD-1抗体に抵抗性でリンパ節に転移した腫瘍はHVJ-Eに反応し、有意な腫瘍抑制を認めた。一方、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体に抵抗性になって腸管に転移した腫瘍をNOD-SCIDマウスに移植した場合は、HVJ-Eによる治療に反応しなかった。HVJ-EではI型インターフェロンが誘導され、これによる抗腫瘍効果も考えられることから、I型インターフェロンの受容体をCRISPR/Cas9でノックアウトしたマウスメラノーマ細胞を作成し、この細胞をマウスに移植して腫瘍を形成させHVJ-Eで治療をおこなった。I型インターフェロン受容体をノックアウトしてもHVJ-Eによる腫瘍抑制は阻害されなかった。昨年度は、ヒト前立腺がん細胞PC3でHVJ-Eによりがん細胞選択的に発現誘導される遺伝子を同定した。その代表的な遺伝子のインターフェロン誘導蛋白質の遺伝子座についてクロマチン状態の変動を調べた。ATAC-seqを施行したところ、何れの遺伝子座もクロマチン構造が弛緩しオープンクロマチン状態になっていた。ChIP-seqを行ったところ、それらの遺伝子座においてH3K27のアセチル化が亢進していたが、H3K4のモノメチル化は変化がなかった。またそれらの遺伝子座にはp300がリクルートされ、IRF7が結合していることが分かった。以上の結果は、HVJ-Eの作用によりがん細胞選択的にクロマチン構造の変化が誘導され、それががん細胞選択的な遺伝子発現誘導につながっていることが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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