研究課題
肺線がんにおいては、EGFR、KRAS活性化型変異、ALK, ROS1, RET, NTRK等の融合遺伝子といったDriver Oncogeneが相次いで発見され、KRAS変異以外では数多くの治療薬の開発が進められている。EGFRおよびALK陽性肺がんでは、複数の薬剤がこれまでに承認され実臨床で使用できるようになってきたが、いずれの薬剤に対しても数年以内に獲得耐性が生じることが臨床上問題である。また、ROS1融合遺伝子陽性肺がんに対してはごく最近ALK阻害薬でもあるCrizotinibが本邦においても承認され、実臨床で使用できるようになったが、同様に獲得耐性の出現が報告されてきている。これまで応募者はALK陽性肺がんを中心に分子標的薬耐性研究を進め、数多くの新規獲得耐性機構を明らかにし報告してきたが、本研究においては、EGFR、ERBB2の比較的低頻度で見られる変異(Exon20挿入変異や耐性変異を含む)を中心に、新規治療法の探索を進めてきた。その結果、まずEGFR変異陽性肺がんの多剤耐性変異(あらゆる既存のEGFR-TKIに耐性)であるEGFR-C797S/T790M/活性型変異に対する薬剤を探索し、その治療法を発見することに成功した。これまでALK阻害薬として開発され、米国においてはCrizotinib耐性となったALK融合遺伝子陽性肺がんに対する治療薬として承認されているBrigatinibがこの多剤耐性EGFR変異に有効であり、さらに大腸がん治療薬として幅広く用いられている抗EGFR抗体を併用することで耐性を克服できることを発見し論文として報告した。また、EGFRおよびERBB2のExon20挿入変異の細胞株を患者検体から樹立することに成功し、いくつかの候補薬剤とそれらに対する耐性機構の一部をIn vitroで発見した。
2: おおむね順調に進展している
研究はやや計画以上に進展しており、順調といえる。各種低頻度Driver Oncogene変異を有する肺がん細胞株で現在購入ができないものについて、一部は同意を頂いた患者検体(胸水、生検など)からの樹立に成功しており、また引き続き作成中の細胞も複数有している。また、薬剤探索用のモデル細胞として使用しているマウスBa/F3細胞に各種Driver Oncogene(各変異型EGFRやERBB2など)を過剰発現させ、Driver Oncogeneに依存した細胞株の作製が順調に進んでいる。また、一部は精製キナーゼのためのコンストラクトづくり等にも成功している。また、強力な変異原物質であるENUを用いたスクリーニングも実施し、新たな獲得耐性の同定にも成功している。また、EGFRの多剤耐性変異の克服法を発見し報告することができており、この点については予定以上の研究進捗といえる。
28年度、やや予定以上の研究の進展が見られたため、引き続き下記の様に予定通り研究を進展させるとともに、予想以上の進捗のあったEGFRの多剤耐性変異克服法の発見については、併用によってより高い有効性を示した分子メカニズムの解明とその応用の可能性について研究を新たに追加して進める。(1)各種低頻度Driver Oncogene変異を有する肺がん細胞株で不足するものを28年度に引き続き収集し、患者検体からの培養株樹立も、引き続きこれまでの研究で培ったノウハウを結集し、培養細胞株化を目指す。そして、各細胞株に対応する上記各種TKI等への感受性を検討する。(2)各種低頻度Driver Oncogene産物に対する分子標的薬候補の探索のために、Ba/F3細胞に各Driver Oncogene (低頻度の変異体)を導入しOncogene dependentなBa/F3細胞の種類を増やす。そして阻害薬候補の探索を、併用療法を含めて検討する。また、ENUによる耐性変異探索も継続して行う。(3)上記検討により同定した分子標的薬、候補阻害薬を用いて、その耐性細胞の樹立を行う。具体的には、数か月かけて段階的に薬剤濃度上げる方法と高濃度の薬剤下で培養する方法などを用いて、複数independentに樹立する。同時に、各細胞株を免疫不全マウス皮下に移植し、担がんマウスモデルを作製する。すでにin vivoでの治療実験の報告があるものについては、同じ条件で治療し、耐性腫瘍が発現してくるまで治療を続ける。
上記のプレスリリースは全国紙の各種新聞社にも取り上げられた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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http://www.jfcr.or.jp/laboratory/news/4824.html