研究実績の概要 |
肺線がんにおいては、EGFR、KRAS活性化型変異、ALK, ROS1, RET, NTRK等の融合遺伝子といったDriver Oncogeneが相次いで発見され、治療薬の開発が進められている。EGFRおよびALK陽性肺がんでは、複数の薬剤がこれまでに承認され実臨床で使用できるようになっており、ROS1融合遺伝子陽性肺がんに対してはALK阻害薬でもあるCrizotinibが承認され、実臨床で使用されている。しかし、いずれの薬剤に対しても数年以内に獲得耐性が生じることが臨床上問題である。29年度は、ERBB2のExon20挿入変異を有する細胞株を当該がん患者の胸水より樹立することに成功した。また、EGFRのExon20挿入変異の細胞株を新たに追加で樹立することに成功し、いくつかの候補薬剤とそれらに対する耐性機構の一部をIn vitroで発見した。その耐性機構の1つは薬剤の結合部位の1アミノ酸置換による変異であった。また、肺がんで非常に低頻度に見られるNTRK融合遺伝子について、現在臨床試験中の薬剤を含めて治療感受性及び抵抗性機構の解析を進め、5つの耐性変異とバイパス経路を介した耐性を発見し、さらにそれら耐性にも有効な薬剤や併用療法を発見し、論文として発表した。また、ROS1融合遺伝子陽性肺がんでは、ROS1阻害薬耐性細胞の解析から治療薬に依存して増殖するユニークな細胞の性状を明らかにすることに成功し、論文として報告した。また、EGFR変異陽性肺がんにおける新たな変異検出手法と、変異アリルの存在比率が次治療の感受性に関与する可能性を見出し、論文として発表した。
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