研究実績の概要 |
肺線がんにおいては、EGFR、KRAS活性化型変異、ALK, ROS1, RET, NTRK等の融合遺伝子といったDriver Oncogeneがこの15年間に相次いで発見され、治療薬の開発が進められている。EGFRおよびALK陽性肺がんでは、複数の薬剤がこれまでに承認され実臨床で使用できるようになっており、ROS1融合遺伝子陽性肺がんに対してはALK阻害薬でもあるCrizotinibが承認され、実臨床で使用されている。しかし、いずれの薬剤に対しても数年以内に獲得耐性が生じることが臨床上問題である。30年度は、ROS1融合遺伝子陽性肺がん細胞株を、ゲランガムを用いた3次元培養することで、ROS1融合遺伝子からの増殖シグナルに完全に依存したモデルを作ることに成功し、そのメカニズムを一部明らかにして論文として発表した。さらに、次世代ROS1阻害薬がCrizotinib耐性変異体にも有効であることをin vitro, in vivoの実験系で明らかにし、論文として投稿した。また、新たな耐性変異候補をも発見した。さらに、ALK融合遺伝子陽性肺がんでは、現在広く1次治療で用いられているAlectinib後に耐性変異が生じた場合にも第3世代ALK阻害薬lorlatinibは高い有効性を示したが、更なる耐性機構として、2つ以上の変異が重なる重複変異を発見し、さらにそれらが再び第1, 2世代のALK阻害薬等に再感受性を示すことを発見した。その中でも、ALK-L1256F変異は単独でもLorlatinib耐性を誘導する新たな変異であり、かつ第2世代ALK阻害薬Alectinibに野生型ALKよりも高い感受性を示すユニークな変異であることも見出し、論文として発表した。
|