研究課題
これまでの研究で、微量解析法を用いて得られた、各細胞種(始原生殖細胞様細胞、胚生12日雌雄始原生殖細胞、胚生16日小腸上皮、周生期網膜視細胞前駆体、形質芽球;全てBLIMP1が必須の役割を果たす細胞系譜)の発生過程における、転写因子BLIMP1結合部位の定量的ChIP-seqを用いて系譜横断的比較解析を行った。BLIMP1結合部位を、それぞれの細胞系譜の発生過程における遺伝子発現変動や、変異体における既報の遺伝子発現変化を用いて評価した。その結果、複数の細胞種に共通して検出される結合部位は(1)結合強度が高く、(2)結合部位にBLIMP1認識モチーフ配列を高頻度で内包し、(3)遺伝子のプロモーター近くに濃縮していることなどが判明した。一方、細胞種に特異的な結合部位は(1)結合強度が比較的低く、(2)結合部位にBLIMP1認識モチーフ配列を含む頻度が低く、(3)遺伝子のプロモーターから遠方に濃縮していることなどがわかった。しかしながら、遺伝子発現との関係を調べると、細胞種特異的結合部位の寄与の方が大きく、細胞種間共通の結合部位は、ほとんど寄与しないことが分かった。また細胞種特異的なBLIMP1結合部位における他の転写因子の認識配列を調べると、各細胞種の発生分化において重要な転写因子の認識配列が優位に濃縮していたが、それらの転写因子認識配列は、BLIMP1による遺伝子発現制御にはほとんど関与していなかった。これらの解析結果は、BLIMP1の機能を規定するエピゲノムコンテキストが、パートナーとなり得る細胞系譜特異的な転写因子ではなく、それ以外のクロマチン構造に依拠していることを強く示唆している。以上の結果をまとめて論文発表した。本研究成果は、特定の転写因子に対して、生体内の実際の結合部位を、多数の細胞系譜(4系譜、6細胞種)にわたって横断的に比較解析した初めての成果である。
2: おおむね順調に進展している
細胞種横断的なBLIMP1結合部位のChIP-seq解析結果をまとめて論文発表できたため。
BLIMP1による、各細胞種の発生制御原理を成立させるメカニズムに関わりうるエピゲノムコンテキストを探索する。とくに転写抑制に関わるH3K27me3と、汎エンハンサーをマークするH3K4me1を重点的に解析する。遺伝子発現変動、結合DNA配列(特に他の転写因子群の結合モチーフ)との関係を調べる。パブリックデータベースに含まれる情報を統合して、BLIMP1の転写制御機能を規定しうる因子を解析する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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