研究課題/領域番号 |
16H04731
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
舟橋 啓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70324548)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 画像解析 / 機械学習 / 深層学習 / 発生・分化 |
研究実績の概要 |
前年度の実装および評価により得られた知見をもとに、平成30年度は隣接したオブジェクトの融合を引き起こさない、畳込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network, CNN)ベースのセグメンテーションアルゴリズムを提案した。本実装アルゴリズムであるQuantitative Time-Series Criterion Acquisition Network (QCANet)はマウス発生過程における各時刻ごとにマウス胚3次元蛍光顕微鏡画像の核セグメンテーションを行い、得られた時系列セグメンテーション画像からマウス発生過程の定量的指標を抽出するアルゴリズムである。QCANetの処理は、核セグメンテーションを行う Nuclear Segmentation Network (NSN) と核同定を行う Nuclear Detection Network (NDN) に大別される。これらの出力結果を分水嶺法により領域分割した画像が、各時刻における QCANet のセグメンテーション結果となる。NSN・NDNの学習およびQCANetの評価には、近畿大学山縣研究室から提供していただいた受精直後から50細胞期まで発生が進んでいるマウス胚時系列3次元蛍光顕微鏡画像を用いた。またNSN・NDNの学習に用いる訓練データとして、セグメンテーションおよび核同定の正解データをそれぞれ18サンプル作成した。 NSNの学習はセグメンテーションの指標であるIoUにより評価を行った。6分割交差検証における平均IoUは0.735を達成し、先行研究のモデルを上回ることに成功した。またNDNの学習は核同定の指標であるF-measureにより評価を行った。同様に6分割交差検証を行い、平均F-measureは0.961を達成し、先行研究を上回ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は深層学習を用いた核セグメンテーションアルゴリズムの開発を行った。同アルゴリズムは2つの異なるニューラルネットワークから構成されており、それぞれ核同定とセグメンテーションを担当する。セグメンテーションの精度は IoU にて 0.735 を達成し、先行研究のモデルを上回ることに成功した。また核同定の精度は F-measure にて 0.961 を達成し、先行研究を上回ることに成功した。前年度課題として挙げていた、隣り合う核が融合してしまい核同定精度が低下する問題点は、上記実装により解消することができた。本研究課題における最大の問題点であった、発生が進んだ段階での核同定精度の低下に対する解決法を提案することができたため、十分な成果が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は実装した学習器の精度向上を目指し、異なる細胞期画像の学習や、ハイパーパラメータのチューニングを行う。また、セグメンテーション評価としてセマンティックセグメンテーションの指標である IoU だけでなく、本研究課題の最大の特長と言えるインスタンスセグメンテーションの指標(MUCov, SEG)による評価を行うことを計画している。インスタンスセグメンテーションとは、隣り合うオブジェクトが会った場合にも正確にオブジェクト同定を行えるアルゴリズムを指す。 上記指標に対して先行研究との制度比較を行った後、マウス発生過程における定量的指標の獲得を行う。また本研究により得られた知見をまとめ、学術論文誌に投稿する。
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