研究課題/領域番号 |
16H04734
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 伸吾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (90202043)
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研究分担者 |
三宅 陽一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (30624902)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生態系保全 / ニホンウナギ / 水産学 / 行動生態学 / 海洋物理・陸水学 / 環境学 / 安定同位体比分析 / テレメトリー |
研究実績の概要 |
【成魚の採集】利根川水系および日本海側で電気ショッカーを用いたウナギの採捕と漁業者からのウナギの入手を行った。得られたサンプルは、ニホンウナギかどうかの同定とともに炭素酸素安定同位体比分析を行って、自然環境下で成長した天然加入個体か、それとも放流個体かどうかの判別を行った。その結果、山口県から京都府にかけての日本海沿岸と東北地方太平洋沿岸南部では連続的に天然個体が生息する一方で、それ以北では局所的に天然個体が生息していることが分かった。また、利根川では河口から200km離れた中流域でも高い割合で天然個体が分布しており、利根川河口堰や利根大堰のように大規模に全面閉鎖できる河川横断構造物であっても、開口時の堰水面の落差が小さく底部での開口が遡上を可能にしていると推定できた。一方で、利根川上流域では約20年前に放流されたヨーロッパウナギが捕獲され、異種ウナギが未だに生息していることが分かった。 【数値モデル開発】地球温暖化に対応した流動場の数値シミュレーション結果を用いて、日周鉛直移動や成長、生残、遊泳能力を考慮したニホンウナギの産卵海域からの生息水域への輸送分散数値モデルを開発し、シミュレーションを試行した。その結果、エルニーニョ現象に対応した仔魚の輸送分散過程を再現することができるようになった。 【テレメトリーによる行動調査】銀ウナギとなって成熟した個体に超音波発信器を装着して、利根川の利根大堰の上流域と下流域に放流し、河口に至るまでの行動を追跡調査した。その結果、降河するにあたって大規模な河川横断構造物が大きな障壁となっていないようであったが、利根大堰の取水口へも入ってしまう個体があり、今後はこの点の評価もする必要があることが分かった。 【産卵海域における種間関係の調査】学術研究船白鳳丸に乗船し、産卵海域おけるニホンウナギを取り巻く種間関係の調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
利根川水系の調査は順調に進捗し、技術的な練度も向上した。輸送分散モデルはプロトタイプの構築ができたので、これからシミュレーションを多数施行可能なレベルに至っているものと判断している。超音波発信器を取り付けたバイオテレメトリー調査も順調に実施することができたが、河川中央部に設置した受信機は大雨や台風による流出が懸念され、実際に流出して回収ができなかった受信機があったので、今後も継続する場合には設置方法の改良が必要と考えている。また、学術研究船白鳳丸に乗船した産卵海域おけるニホンウナギを取り巻く種間関係の調査を平成25年度に引き続き実施し、資試料を増やすことによって、より確固たる結論が得られるように努めた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画からとくに大きな変更をする必要はないと考えており、予定通りに①数値シミュレーションの実施とモデルの改良、②産卵海域における種間関係の解析、③利根川水系および日本全国における成魚の採集の継続、④バイオテレメトリーによる行動調査結果の分析を実施する予定である。
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