研究課題
【小規模河川におけるバイオテレメトリー調査】利根川水系上流域の巴波川におけるニホンウナギの活動範囲、活動時間、定住性の有無等の行動生態を明らかにするため、超音波バイオテレメトリー手法を用いて本種の経時的な移動を一年以上の長期にわたる追跡調査を開始した。まだ途中の段階ではあるが、川幅等の河川規模が縮小しても行動範囲が極端に縮小するという傾向は認められず、行動範囲は河川規模には依らない可能性があることが示された。現在も追跡調査は継続中であり、一年のデータが集積された段階で結論を出す予定である。【小規模河川における成長分布調査】本流が5 kmにも満たない小規模河川を対象に、ニホンウナギの分布・成長特性を明らかにするため、静岡県の駿河湾に面した4河川で電気ショッカーを用いたニホンウナギの定量採集と環境測定を行い、採集試料の体長と体重の測定、生殖腺による性判別、耳石による年齢査定を行った。その結果、4河川とも若齢小型個体が多く、性分化が確認できた個体については雌が優占し、下流から上流にかけて個体数密度の減少傾向と大型個体の増加傾向が認められることが分かった。成長曲線を算出した雌個体の極限体長は450 mm以下であり、中規模河川と比較すると非常に小さな値であった。これは小規模河川では高密度環境が同種間競争を引き起こし、最大到達体長を制限することが要因と考えられることが分かった。【環境DNAによる分布調査】日本列島におけるニホンウナギの北限および利根川水系における遡上限界を明らかにするため、環境DNA分析に供するための河川水の採水調査を開始した。現在、分析中であり2019年度も調査を継続する予定である。【数値シミュレーションによる輸送分散過程の解析】地球温暖化の影響を評価するために数値シミュレーションを試行し、将来予測の分析を行っており、得られた成果を原著論文として投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
小規模河川における成長・分布に関わる調査を順調に実施しているだけでなく、バイオテレメトリー調査および環境DNA調査も滞りなく進んでいる。また、数値シミュレーションに関わる成果は原著論文として投稿中であることから、おおむね順調に進展していると評価した。
バイオテレメトリー調査および環境DNA調査を継続して実施する。また、これまで行ってきた静岡県以外の水域でニホンウナギの採集調査も新たに実施する予定である。それらのデータに基づき、本種の分布や生態について新たの知見をまとめ、今年度が最終年度であることから、得られた成果を原著論文、学会発表などを多数行って社会発信する予定である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
日本水産学会誌
巻: 85 ページ: 150-161
doi.org/10.2331/suisan.18-00038
Journal of Fish Biology
巻: 93 ページ: 1009-1014
doi.org/10.1111/jfb.13782
PLOS ONE
巻: - ページ: -
doi.org/10.1371/journal.pone.0195544
科学
巻: 88 ページ: 572-576