研究課題
構成的ヘテロクロマチンと条件的ヘテロクロマチンは、異なる構成因子やエピゲノムマークを使用していること、かたやテロメアやセントロメアなどの染色体の意地伝達に、かたや発生・分化に関与する遺伝子発現制御に機能することから、全く異なるものとして議論されてきた。しかしながら、申請者らの研究成果などから、互いに代替可能で共通の構成要素や機能を持つこと、また、互いに連携して働きうることを示す知見が蓄積している。本課題では、構成的、条件的ヘテロクロマチンの機能構造をそれぞれについて明らかにし、その共通点と相違点を理解することを目的とした。本年度は、1)ポリコーム複合体(PcG)の不活性X染色体のヘテロクロマチンへの影響、2)HP-SENP7-SETDB2-SMBP1の相互作用様式の解析、3)これら因子とhoechst denseなクロマチン高次構造との関係を明らかにすることとした。1)に関しては、PcGのコア複合体の構成因子であるSUZ12を細胞から除去して、多点FISH法にて凝縮度を解析したところ、H3K27me3領域の凝縮度に影響しなかった。このことから、PcGはXISTの下流でヒストン修飾に主に関与していると考えられる。2)に関しては、SETDB2のMBDがSMBP1との結合に必要なこと、また、SMBP1が持つC末端のRing fingerがSETDB1およびSETDB2との結合に必要であることを見出した。SETDB1およびSETDB2のMBDの機能は不明であったが、SMBP1と複合体を形成した状態で機能を解析を進めれば良いことが示唆された。3)SETDB2とSENP7を同時に発現させると、SATIIあるいはSATIIIへのHP1の局在が促進された。このことは、この複合体がヒストン修飾かクロマチン高次構造に働きかけることを示唆するものである。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究により、計画通り、ポリコーム複合体の不活性X染色体のヘテロクロマチンへの影響、HP-SENP7-SETDB2-SMBP1の相互作用様式の解析、これら因子とhoechst denseなクロマチン高次構造との関係が明らかになりつつあり、全体の計画は概ね順調に進行していると考える。
本年度の研究成果をもとに、計画どおり、不活性X染色体、および、SATIIあるいはSATIIIのようなリピート領域に形成されるヘテロクロマチンの構成要素とその役割をタンパク質相互作用を基軸に明らかにしていく。それと関連して、数Mbレベルの折りたたみによる大きな構造、数kbベースを単位とする小さな構造に関して、それぞれ、FISHによる解析法、high C技術による解析法を想定しており、計画通り進める予定である。一方で、生きた細胞では計測が難しいこと、コストや労力のことを鑑みて、ゲノム編集法を応用した新たな技術開発も検討したい。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
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