研究課題
遺伝情報の翻訳では、開始、伸長、終結のステップを終えたリボソームは、リサイクル機構により再生され、新たな翻訳に利用されている。最近、このリサイクル反応に寄与する因子として、ABCE1(ATPase)が同定され注目されている。本研究では“stalk”と呼ばれる機能性リボソームタンパク質に注目し、ABCE1との結合性およびその機能面への意義について解析してきた。平成30年度は、古細菌Pyrococcus furiosusのABCE1の結晶構造の精査と各種変異体を用いた生化学的結合実験から、stalkタンパク質は類似した2つのドメインから成るABCE1のドメイン1に結合するが、ドメイン2への結合性は検出されなかった。これは両ドメイン構造のわずかな差に帰因すると推察した。stalkタンパク質とABCE1間の相互作用の機能面の解析は、酵母の系を用いた。平成29年度に調製した酵母ABCE1(Rli1)のドメイン1への変異体を用いたin vitro機能解析の結果、stalkタンパク質との結合性が低下したRli1は酵母リボソーム依存のATPase活性が低下するばかりでなく、80Sリボソームをサブユニットに解離させる活性も低下することを明らかにした。さらに、酵母ゲノム中のRli1の発現を抑制し、プラスミドにより野生型と各種変異型Rli1を添加する系を構築し、この系を用い、stalkとRli1ドメイン1間の相互作用を崩壊させると、細胞成育が妨げられることを明確に示した。これまで、stalkタンパク質はGTPase翻訳因子と協調的に機能することが知られていたが、本研究により始めて、ATPase翻訳因子である ABCE1との機能協調が立証された。また、リボソームstalkタンパク質が各種 GTPase因子に加えてATPase因子と相互作用し翻訳過程全般にはたらくことが判明した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
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