研究課題
減数分裂期組換えは配偶子のゲノムの多様性を生み出すばかりでなく、減数第一分裂の染色体分配に必須の役割を果たし、その数や分布は厳密に制御されている。減数分裂期組換えの根幹をなすDNA鎖相同検索反応には体細胞分裂期RecAホモログRad51に加え、減数分裂期型RecAホモログDmc1の働きにより、姉妹染色体でなく、相同染色体間のDNA鎖交換を行う、パートナー選択、と言う特性が存在する。その特異性はRad51, Dmc1や一緒に働く正,負の因子群の働きや反応が起こる場、染色体構造、により決まると考えられる。本研究は、Rad51, Dmc1によるDNA鎖相同検索反応の組換えパートナー選択の特異性を知るために、我々が同定したRad51集合を助けるPsy3-Csm2-Shu1-Shu2(PCSS)複合体とDmc1の集合を担うMei5-Sae3複合体の構造解析に基づく分子論的機能解析に加え、DNA末端の機能的非対称性と染色体構造による組換え反応制御と言う点から機能解析を行い、統括的に減数分裂期組換えの特性を分子レベルで理解することを目指している。2016年度はDmc1の集合を担うMei5-Sae3複合体の構造解析を行い、立体構造に基づく機能解析を行っている(蛋白研中川博士との共同研究)。高等真核生物の減数分裂期組換えの仕組みを知るため、Rad51フィラメントの集合を促進する複合体のホモログのノックアウトマウスを作成した。その表現型の解析が進行中である。これまでのRad51フィラメントの集合を促進する因子は全てノックアウトをすると胚性致死を示したが、このSWSAP1のノックアウトマウスは胚で致死性を示さず、大人にまで成長することが分かった。つまり、組換えの個体レベルでの機能を解析する上で有用なモデルである可能性が高い。
2: おおむね順調に進展している
合体の構造解析を行い、立体構造を決定した。その構造は2つのヘリックスが織りなす棒状構造をしているが、機能的特徴は見出せなかった。一方、構造が類似したものを検索したところ、Dmc1の集合ではなく、集合後のDmc1フィラメントの活性を促進するHop2-Mnd1複合体と似ているという興味深い特徴を持つ。これらの類似性から、Dmc1フィラメントの動的構造を制御する因子の共通構造的基盤が明らかになることが期待できる。そのためにも、Mei5-Sae3複合体の構造の基づいた機能解析並びに、試験管内のDmc1とRad51を用いた組換え系の確立も急務になる。一方、高等真核生物でもRad51, Dmc1の協調によるパートナー選択の分子メカニズムを明らかにするため、これまで解析した酵母のRad51フィラメントの集合を促進する複合体PCSS構成要素のShu2ホモログのSws1と結合するSWSAP1のノックアウトマウスを作成した。遺伝子がノックアウトできることを検証後、MEF細胞を取り、DNA損傷に対する感受性を調べたところ、感受性を示したことから、SWSAP1が組換え修復に関わる可能性が高い。また、これまでのRad51フィラメントの集合を促進する因子は全てノックアウトをすると胚性致死を示したが、このSWSAP1のノックアウトマウスは生存することが分かった。つまり、組換えの個体レベルでの機能を解析する上で有用なモデルである可能性が高い。
構造的知見をもとにして、Mei5-Sae3複合体によるDmc1機能の促進の仕組みを知るために、精製したMei5-Sae3複合体とDmc1による試験管内の反応系の確立と、それを用いた生化学的解析に加えて、Mei5-Sae3複合体とDmc1,場合によってはDNAを含む、の共結晶化により詳細な構造解析を目指す。同時に、決定できた構造情報に基づいて複数の部位突然変異を網羅的に導入することで、機能-構造相関、特にDmc1との相互作用に重要領域を同定し、それに基づく、Mei5-Sae3複合体とDmc1フィラメント構造のモデル化を目指す。Rad51の集合に関しては、ヒトの組換え反応を試験管内で再構成することも試みる。特に、Rad51の集合に大切や役割を担うPCSS複合体の中で、Shu2のホモログSws1、Pys3のホモログSws1AP1はヒトで同定されていることから、これらの因子の生化学的解析や構造解析に加え、Sws1AP1-Flag Sws1AP1-Flagを発現した細胞複合体精製することで、この複合体のヒト細胞からの精製を試み、他の構成成分の同定や活性解析も同時に行う。SWSAP1のノックアウトマウスは生存することから、個体レベルでの組換えの機能を知る上で有用なモデルになると考えられ、ガン化との関連を解析することを予定している。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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