研究課題/領域番号 |
16H04742
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
篠原 彰 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (00252578)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 相同組換え / ゲノム安定化 / 染色体 / 減数分裂 / RecAホモログ / Rad51 / Dmc1 |
研究実績の概要 |
減数分裂期組換えは配偶子のゲノムの多様性を生み出すばかりでなく、減数第一分裂の染色体分配に必須の役割を果たし、その数や分布は厳密に制御されている。減数分裂期組換えの根幹をなすDNA鎖相同検索反応には体細胞分裂期RecAホモログRad51に加え、減数分裂期型RecAホモログDmc1の働きにより、姉妹染色体でなく、相同染色体間のDNA鎖交換を行う、パートナー選択、と言う特性が存在する。その特異性はRad51, Dmc1のみならず、それぞのタンパク質と一緒に働く正,負の因子群の働きや反応が起こる場、染色体構造、により決まると考えられる。本研究は、Rad51, Dmc1によるDNA鎖相同検索反応の組換えパートナー選択の特異性を知るために、我々が同定したRad51集合を助けるPsy3-Csm2-Shu1-Shu2(PCSS)複合体とDmc1の集合を担うMei5-Sae3複合体の構造解析に基づく分子論的機能解析を中心にこれまで解析してきた。2017年度は前年に引き続き、Dmc1の集合を担うMei5-Sae3複合体の構造解析を行い、立体構造に基づく機能解析を行っている。さらに、高等真核生物の減数分裂期組換えの仕組みを知るため、Rad51フィラメントの集合を促進する複合体のホモログSWSAP1のノックアウトマウスを作成し、その表現型の解析も行っている。その表現型の解析は昨年度より引き続き、進行中であるが、SWSAP1のの個体での機能が分かりつつある。特に、これまでのRad51フィラメントの集合を促進する因子は全て、マウスでノックアウトをすると胚性致死を示したが、このSWSAP1のノックアウトマウスは胚で致死性を示さないことが分かった。また、不妊であることから、つまり減数分裂期にも欠損があることが分かった。つまり、組換えの個体レベルでの機能を解析する上で有用なモデルになる可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、蛋白研中川博士との共同研究に寄って、Dmc1の集合を担うMei5-Sae3複合体の構造解析を行い、立体構造を決定し、Mei5-Sae3複合体の構造の基づき、多数のMie5, Sae3変異株を作成した、機能解析から、Mei5-Sae3の機能に大切な、複数の機能に重要なアミノ酸残基を同定している。また、試験管内のDmc1とRad51を精製し、試験官内での組換え系の確立の確立も同時並行で行っている。一方、高等真核生物でもRad51, Dmc1の協調によるパートナー選択の分子メカニズムを明らかにするため、これまで解析した酵母のRad51フィラメントの集合を促進する複合体PCSS構成要素のShu2ホモログのSws1と結合するSWSAP1のノックアウトマウスを作成した。また、これまでのRad51フィラメントの集合を促進する因子は全てノックアウトをすると胚性致死を示したが、このSWSAP1のノックアウトマウスは生存することができること、つまり、個体の成長には必須ではなく、個体レベルでの組換えの機能を知る上で良いモデルマウスになると期待できる。個体は生育するが、不妊であり、減数分裂期に欠損を持つことが分かった。免疫染色から、Rad51の集合反応に欠損があることも分かってきた。同様に、ノックアウトマウスの胚から、MEF細胞を確立し、DNA損傷に対する感受性を調べたところ、感受性を示したこと、免疫染色から、Rad51の集合反応に欠損があることが分かった。つまり、SWSAP1がDNA損傷の組換え修復に関わる可能性が高い。これらの結果から、SWSAP1は高等真核生物のRAD51による相同検索反応のメカニズムを知る上で良いモデルケースになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Mei5-Sae3複合体の構造的知見をもとにして、Mei5-Sae3複合体によるDmc1機能の促進の仕組みを知るために、精製したMei5-Sae3複合体とDmc1による試験管内の反応系の確立と、それを用いた生化学的解析を中心に行う。加えて、Mei5-Sae3複合体とDmc1,場合によってはDNAを含む、の共結晶化により詳細な構造解析を目指す。同時に、決定できた構造情報に基づいて複数の部位突然変異を網羅的に導入する研究をさらに進めることで、Mei5-Sae3複合体の機能-構造相関、特にDmc1との相互作用に重要領域を同定し、それに基づく、Mei5-Sae3複合体とDmc1フィラメント構造のモデル化を目指す。 高等真核生物の組換え反応の1つ、Rad51の集合の分子機構を知る研究は、ヒトの組換え反応を試験管内で再構成することも試みる。さらに、この経路に関わる未知の因子を同定するため、Sws1AP1-Flag Sws1AP1-Flagを発現した細胞から、複合体精製し、SWSAP1に結合するタンパク質の機能解析もも合わせて実施する。さらに、精製した、この複合体による、ヒトRAD51による相同検索反応の試験管内再構成系からの分子メカニズムの解明を目指す。また、減数分裂期に大きな欠損を示すSWSAP1のノックアウトマウスの解析も進める。SWSAP1のノックアウトマウスは生存することから、個体レベルでの組換えの機能を知る上で有用なモデルになると考えられ、ガン化との関連を解析する共同研究を計画している。
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