研究課題
H28年度はAU-Rich Element (ARE)結合タンパク質の1つBRF1によるmRNA分解と翻訳制御との関係を中心に解析を進めた。代表者は、これまでにluciferase mRNAの3’非翻訳領域にAREを含む標的配列を付加したレポーターRNAを用いて、ARE結合因子BRF1の存在下および非存在下でのレポーターの発現および mRNAの安定性をin vitro翻訳系で検証することに成功している。そしてこれまでに、エフェクターに応答したmRNA分解マシナリーの存在を提唱してきた。そこで、このin vitro解析系を利用し、RNA結合タンパク質HuD&による翻訳活性化とmRNA分解機構に対する拮抗あるいは協調関係を詳細に解析した。まず、BRF1がどのようなマシナリーでmRNA分解を誘起するのかを、poly(A)分解複合体であるCCR4-NOT複合体の構成因子のKOマウスから得られたMEFを用いて解析し、どの因子がBRF1を介したmRNA分解に必須な因子であるかを特定した。さらに、脱アデニル化を受けないレポーターmRNAを用いて翻訳への影響を解析した結果、BRF1に翻訳抑制能があることを明らかにした。また、BRF1による翻訳抑制機構が開始複合体から翻訳開始因子eIF4Aを離脱させるというmicroRNAによる翻訳抑制の分子機構と異なることもmRNP pull-down実験系で明らかにしている。
1: 当初の計画以上に進展している
翻訳制御とmRNA分解との2つの機能を有するRNA結合タンパク質の分子機構が明らかになってきたため。
さらに、活性型 Akt1-HuD からのシグナルが BRF1 へと伝達され、mRNAの安定化に寄与するかどうかを HuD の Akt1結合変異体および BRF1 の非リン酸化変異体を用いて mRNA の安定性・deadenylation そして翻訳活 性を指標に検証する。さらに分担者は、人工合成した ARE を有するレポーターmRNA をゼブラフィッ シュ受精卵中で可視化し、翻訳が活性化時および抑制時にどのような局在の変化を呈するかを、HuD および BRF1 の局在と共に詳細に観察する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 14件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Mol Microbiol.
巻: 104 ページ: 428-448
10.1111/mmi.13636.
The Journal of Biochemistry
巻: 161 ページ: 309-314
10.1093/jb/mvw086.
Nihon Yakurigaku Zasshi
巻: 147 ページ: 346-350
10.1254/fpj.147.346.
生化学 みにれびゅう
巻: 88 ページ: 135-138
10.14952/SEIKAGAKU.2016.880135
http://www.phar.kindai.ac.jp/biochemistry/