研究課題/領域番号 |
16H04745
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
藤原 俊伸 近畿大学, 薬学部, 教授 (80362804)
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研究分担者 |
三嶋 雄一郎 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (00557069)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | mRNA-タンパク質複合体(mRNP) / 翻訳制御 / mRNA分解 / RNA結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
ZFP36L1(BRF1)はmRNAの3'UTRに存在するAREに結合してmRNAの不安定化に寄与する。一方、RNA結合タンパク質HuDはAREを有するmRNAに結合し、その安定化に寄与し、翻訳を正に制御する。本研究では、ZFP36L1がmRNAを不安定化させる機能に加えて、翻訳機構に機能を及ぼすかどうかを独自のin vitro翻訳系で解析を行った。その結果、ZFP36L1はmiRNAによる翻訳抑制機構とは異なる機構で翻訳抑制を行うことを示唆する結果を得た。この結果は、遺伝子発現制御に脱アデニル化複合体であるCCR4-NOT複合体を用いる2つの機構が、異なる素過程で翻訳抑制を行うという点で非常に興味深い。また、miRNAによる翻訳抑制がHuDの介在によりキャンセルされることから、今後HuDとZFP36L1との関係をin vitro系で詳細に解析したい。 また、HuDはAREに結合してmRNAの安定化に寄与し、かつ翻訳を速h心させる。このとき、活性型のAkt1と結合することが必要である。他方、ZFP36L1はAkt1にリン酸化され、AREを介したmRNAの不安定化への寄与が解除される。そこで、翻訳開始複合体中での拮抗関係を明らかにするためにあらたなin vitro翻訳システムを構築した。 一方、miRNAによる翻訳抑制およびポリAの脱アデニル化に寄与する責任因子の同定をin vitro翻訳系と質量分析とを組み合わせた手法により同定を試みた。現在、これら因子を網羅的にKOあるいはノックダウンした細胞を調製し、in vitro翻訳系でにおいてmiRNAによる遺伝子発現機構への関与を調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZFP36L1はこれまで、AU-RICH ELEMENTに結合し、CCR4-NOT複合体を介したポリAの脱アデニル化に関与することが知られていたRNA結合タンパク質である。今回ZFP36L1が同じくCCR4-NOT複合体を介したポリAの脱アデニル化および翻訳抑制機構に関与するmiRNAとは異なる機構で翻訳抑制を行うことを示唆する結果を得た。この結果は、遺伝子発現制御に脱アデニル化複合体であるCCR4-NOT複合体を用いる2つの機構が、異なる素過程で翻訳抑制を行うという点で非常に興味深い。
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今後の研究の推進方策 |
ZFP36L1はシグナル伝達因子AKt1によりリン酸化されその機能を失う。一方我々はHuDは活性型Akt1と結合し、翻訳を促進させているという報告を行っている。そこで現在我々は翻訳開始複合対中におけるRNA結合タンパク質をシグナルの受け手とした制御モデルを提唱している。これらの結果をふまえ、さらに解析を進める予定である。
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