研究課題
最近、代表者らは細胞のクロマチンが従来考えられてきたような、いわば結晶のように規則正しく折り畳まれた階層構造ではなく、液体のように不規則で流動的な構造であることを明らかにした。それでは、この流動的な環境において、ヘテロクロマチン領域はどのようなメカニズムでクロマチンを不活化しているのであろうか?代表者らは、ヘテロクロマチンは個々のヌクレオソームのダイナミクス(動態)の抑制によって規定されているという仮説を立てた。本研究では、仮説を検証するため、ヌクレオソーム1分子イメージングによってヘテロクロマチンのヌクレオソーム動態を解明する。そしてクロマチン不活化のメカニズムをヌクレオソーム動態の実験・理論の両面から明らかにすることを目的としている。本年度は以下の3つの項目について研究をおこなった。ヘテロクロマチン様ラベルのために内在性ヒストンプロモーターH4-PA-mCherry安定発現NIH3T3細胞 を作製した。そしてユークロマチン様ラベルにはEF1a-プロモーターH4-PAmCherry安定発現NIH3T3細胞を作製した。ヌクレオソーム1分子観察のため、細胞内の限られた範囲だけを照らし出すことができる斜光照明のシステム ( 原理Tokunaga et al., Nat. Methods, 2008)を用い、H4-PAmCherry安定発現細胞を用いて、動画50ms/frame撮影 をおこなった。そして観察した蛍光輝点は点拡かり(ガウス)関数でフィッティングし、正確な中心を決定する。次に1個1個の ヌクレオソームの動きを追跡し、データを集めた。そして1細胞当たり数万のヌクレオソームの輝点情報を集める。この 情報からヌクレオソームの動きを定量化するため、動きの平均2乗変位 (MSD)を算出した。
2: おおむね順調に進展している
細胞の作製、測定、データ解析のシステムを立ち上げ、計画通りに進んだ。
ヘテロクロマチンにおいて、ヌクレオソームのリンカーDNAをつなぎ止めるクリップの役割をしていると考えられているリンカーヒストンH1を蛍光ラベルし、H1に富んだヌクレオソームの1分子解析をおこなう。H1-PA-mCherryを細胞内で少量発現させ、安定発現細胞を単離する。H1 ヌクレオソーム1分子観察のため、細胞内の限られた範囲だけを照らし出すことができる斜光照明のシステム (を用い、動画50ms/frame撮影をおこなう。観察した蛍光輝点は点拡かり(ガウス)関数でフィッティングし、正確な中心を決定する。次に1個1個のヌクレオソームの動きを追跡し、データを昨年度と同様に解析し、ユークロマチンでの解析と比較する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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