研究課題/領域番号 |
16H04748
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 治夫 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (40292726)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膜蛋白質 / イオンポンプ蛋白質 / X線結晶解析 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目標は、細胞内カルシウムイオンが組織特異的に制御される機構を原子構造に基づいて理解することである。小胞体に存在し、細胞の生存と機能に必須なカルシウムイオンポンプであるSERCAがその中心的役割を担うが、骨格筋由来のSERCA1a以外の機能・構造解析はあまり進んでいないのが現状である。そこで、組織分布・生化学的性質の異なるサブタイプである、SERCA2a、SERCA2b、SERCA3の機能解析・立体構造解析を通じ、SERCA1aと比較することで、組織特異的な細胞内カルシウムイオン制御機構の理解へ向けた研究を目指した。 平成28年度と平成29年度に行った繰越研究により、SERCA2bの結晶構造解析に大きな進展が見られた。研究開始当初は小さく解析が困難であった結晶であったが、精誠条件や結晶化条件の検討を繰り返し行うことにより、解析に耐えうる大きさにまで成長するようになったことは特筆すべきことである。現在構造解析を進めている最中であるが、これにより、本研究期間中に最終的な構造を得ることも十分現実的になってきた。今後も引き続き条件検討を行い、解析を進める予定である。また、SERCA3のスプライシングバリアントは6種類あるが、これら全ての変異アデノウィルスの作成に一応成功した。発現蛋白質はSDS-PAGE/CBB染色で確認することができている。今後精誠条件を検討すると共に、機能解析を遂行する予定である。また、精誠に成功したならば、結晶化にも取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年6月に、変異アデノウィルス大量生産に使用していた哺乳類培養細胞が別のウィルスで汚染されていた疑いが発覚した。原因究明の結果、実際の汚染が確認され、ストック細胞の全処分を行った。その後、種細胞を購入し直し、変異アデノウィルス増幅後に再度ウィルス大量生産・精製を行い、蛋白質の大量生産のやり直しを行った。現在は正常に動いているが、以上の作業のために6ヶ月を要し、そのために実験遂行に多少の遅れが生じた。そのために、研究遂行にやや遅れが生じたが、平成29年度に行った繰越研究により挽回することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、SERCA2bの大量生産・精製を行う。また、既に得ている結晶の質の改善を試みるとともに、高輝度放射光SPring-8等の実験施設を利用し、X線回折データを収集し、構造精密化を行う。成果を論文としてまとめることが当面の目標である。SERCA3の各スプライシングバリアントを発現するアデノウィルスの作成には成功したので、これらウィルスの大量精製を恒常的に行い、各スプライシングバリアントの大量生産・精製も恒常的に行うことができる体制を整える。十分量の精製標品が得られたならば、各キネティックス実験に取り組むとともに、究極の目標である結晶化にも取り組む。また、SERCA3のC末端の役目の理解のためにも、C末端欠損変異体を発現するウィルスの作成に取り組む。ウィルスの作成に成功したならば、野生型と同様に大量生産・精製を行い、各キネティックス実験に取り組む。
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