研究課題
ヒト由来の LRRTM と Neurexin の細胞外ドメインの遺伝子を pEBMulti ベクター(Wako Chemical)にクローニングした。この発現ベクターをヒト培養細胞(Expi cell, Invitrogen)に導入し、一過性で発現させた。発現させたタンパク質を Ni カラムによって精製し、さらにゲルろ過クロマトグラフィーによって精製した。精製した両者を混合して複合体を形成させて結晶化サンプルとした。さらに、微量自動結晶化装置を用いてシッティングドロップ蒸気拡散法によって結晶化を行い、結晶を得ることができた。得られた結晶の回折データを、大型放射光施設 SPring-8 や Photon Factory にて測定した。得られた回折データを基に、分子置換法によって構造解析を行ったところ、LRRTM 単体の結晶であることが明らかになった。さらに構造精密化を行い、ヒト由来の LRRTM として初めての構造解析に成功した。一方、SALM-RPTP複合体についても同様にヒト培養細胞を用いた発現系を構築し、同じくアフィニティー精製とゲルろ過クロマトグラフィーによって精製した。精製したサンプルを用いて混合して複合体を形成させ、結晶化を行い、様々な結晶を得ることに成功した。 SPring-8 や Photon Factory での回折データ測定の結果、SALM 単体について 3.5 Å 分解能の回折データと、複合体については 4 Å 分解能の回折データを得ることが出来た。それぞれについて類似分子の立体構造を基にした分子置換法によって位相決定に成功した。
2: おおむね順調に進展している
LRRTM と Neurexin については、両者のサンプル調製と結晶化まで進める事が出来た。但し、得られた結晶は LRRTM 単体のものであったため、複合体の調整も含めて更なる改善が必要である。一方、SALM-RPTP複合体についても同様に結晶化まで進展させる事が出来た。得られた回折データは十分に高分解能とはいえず、完全な精密化にまでは至っていないが、位相決定には既に成功しており、今後の結晶の改善で解決出来るものと期待される。今後は精密化をさらに進めると共に結晶を改善してより高分解能データの測定も行う。以上の結果を踏まえて、概ね順調に進展していると言える。
LRRTM と Neurexin については、生化学的実験によってその結合にカルシウムイオンが必須である事を見いだした。今後は、カルシウムを含む形で複合体の形成と精製を再度行い、複合体での結晶化を行う。得られた結晶の回折データは、大型放射光施設 SPring-8 や Photon Factory にて測定し、昨年度解析した LRRTM 単体の立体構造を用いた分子置換法によって構造解析を行う。SALM-RPTP複合体については、結晶の改善をさらに行う。必要に応じて結合に必要の無いドメインの削除や、ディスオーダー領域の切り詰めを行う。また構造解析によって結合に重要な残基を見いだし、その変異体を作製し、結合に及ぼす影響を表面プラズモン共鳴法によって解析する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 備考 (1件)
Scientific reports
巻: 7 ページ: 40909
10.1038/srep40909.
巻: 7 ページ: 42123
10.1038/srep42123.
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 33548
10.1038/srep33548
http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/pressrelease/160916/