ユビキチン(Ub)は酵母からヒトまで広く保存されたタンパク質であり、鎖状につながった複数個のUb(Ub鎖)が様々な分子シグナリングにおいて重要であることが明らかになってきている。Ub鎖はUbのLys残基、もしくはN末端Met1残基のアミノ基を用いて形成されるが、どの残基を用いて形成されるかによってUb鎖の構造と機能は大きく異なる。細胞内のエフェクターがどのようにこのUb鎖を見分けているのかは近年大きな注目を集めている。 本研究では、不良ミトコンドリアのUb鎖修飾に関与するタンパク質である、USP30およびPINK1の機能・構造解析を目的としていたが、計画していた全ての実験が一昨年度に完了したため、昨年度はそれ以外のユビキチン関連タンパク質の構造解析を行った。近年、プロテアソームによる基質分解経路の上流において、Npl4がLys48結合型Ub鎖と特異的に結合することが重要であることが報告された。Npl4はUfd1と共にヘテロダイマーを形成し、AAA ATPaseファミリーのCdc48のコファクターとして働く。Lys48結合型Ub鎖修飾を受けた膜タンパク質や複合体のサブユニットは、Cdc48-Npl4-Ufd1により事前に解きほぐされることで、プロテアソームでの分解が進行する。しかし、Npl4によるLys48鎖認識メカニズムや、Npl4-Ufd1複合体形成メカニズムは不明であった。そこで、Npl4とLys48結合型ポリユビキチン鎖との複合体の結晶構造解析を行い、Npl4によるLys48結合型ポリユビキチン鎖特異的結合メカニズムを明らかにした。また、Npl4とUfd1との複合体の結晶構造解析を行い、その複合体形成メカニズムを明らかにした。さらに、それぞれの相互作用面に点変異を導入し、機能解析を行った。
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