本研究では、Methanothermobacter thermoautotrophicus由来オロチジン一リン酸脱炭酸酵素(MT-ODCase)について、水素原子を含む構造解析を行う事で、酵素基質間の静電的反発を実験的に示す計画である。このために必須となる、大型で高品質の結晶作製法の検討ならびに、作成した結晶からのデータ収集を行った。 はじめに、これまでの約5倍のスケールで大腸菌を培養し、MT-ODCaseを大量に発現させる系を確立させた。これにより、精製・結晶化に供することの出来る試料の量を大幅に増加させた。続いて精製条件の再検討を行った。従来の方法で精製したMT-ODCaseは、Native PAGEで分析すると、複数バンドになることがわかっている。バンドが複数ある事は、試料状態が均一で無いことを示しており、これを均一のバンドにする事が出来れば結晶の質がより向上することが期待できる。従来の最終精製標品を、担体の粒子径が非常に小さい陰イオン交換カラムであるMiniQカラムでさらに精製したところ、Native PAGEでそれぞれのバンドを示す成分を、ある程度まで分離することが出来た。この試料を結晶化した際の挙動については、現在観察中である。さらに結晶化条件の再検討も行い、従来よりも大型のMT-ODCaseと6-hydroxy-UMPとの複合体の結晶を得ることができた。この結晶をシンクロトロン放射光施設での解析に供したところ、1.1Å分解能を超えるデータを収集することに成功した。このデータを用いた解析は現在進行中である。
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