研究実績の概要 |
本研究では、酵素反応中心における静電的な反発を実験的に明らかにするため、M. thermoautotrophicus ODCase (Mt-ODCase)の解離性残基の立体構造を高分解能で決定する。このため、これまでに生成物Uridine 5’-monophosphateとの複合体を1.03Å分解能でX線結晶構造解析できている実績(文献1)を踏まえ、より遷移状態に近いと考えられる阻害剤6-hydroxyuridine 5’-monophosphateとMt-ODCaseの複合体構造を超高分解能でX線結晶構造解析することに取り組む。 2018-19年度には、それまでの研究成果を基に、シーディングで用いる種結晶に注意しながら、高品質な結晶の大量生産を行った。得た結晶を用いて、X線による結晶の損傷に注意しながら多数のデータを収集した。これらのデータを精密化し、吸収線量ごとに構造の比較を行った。MT-ODCaseの活性中心付近では水素結合や静電的結合が複雑にネットワークを形成しているため、もし活性中心付近の各残基の電離状態が変化すれば、炭素・窒素・酸素原子が移動すると考えられる。しかし、吸収線量500kGyまでであれば、活性中心周辺の構造変化は起こらなかった。500kGy以上の吸収線量では、活性中心近傍の水分子の占有率が顕著に低下した。このことは、500kGyまでの吸収線量で、データの収集を行うべきであることを示している。 文献 Fujihashi, M. et al., J. Biol. Chem. (2013), 288, 9011-9016
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