GPIアンカー型タンパク質は、糖脂質であるGPIで膜にアンカーされていることによって、膜ラフトへの局在など特有の性質を持つ。GPI骨格はタンパク質間で共通であるが、側鎖によって構造の多様性が生まれる。本研究では、(1)未解明のGPI側鎖形成機構を解明し、GPIアンカーの構造多様性の分子基盤を明らかにする。また、(2)GPI側鎖形成に働く遺伝子のノックアウトマウスを作製して解析し、加えて、これら遺伝子の変異で起こる疾患を発見して、GPI側鎖の生理的意義を解明する。さらに、(3)GPI側鎖研究から最近見いだした、タンパク質に結合していないフリーGPIの細胞内動態を明らかにする。そして、フリーGPIの異常蓄積が、新規GPI異常症である非典型発作性夜間ヘモグロビン尿症の自己炎症性症状を引き起こす機序を解明して、病理的意義を明らかにする。平成28年度には、以下の進捗があった。(1)GPI側鎖の根元のNアセチルガラクトサミンを付加する酵素であるPGAP4に関し、3つの膜貫通ドメイン(TMD)を持つ特異なゴルジ体糖転移酵素であること、特に、N末端側のTMDがゴルジ体局在を決定すること、そしてC末端側の連続したTMDは、糖転移酵素ドメインに挿入され、膜上にあるGPIアンカーに酵素ドメインを近づけていることを証明した。(2)に関し、PGAP4ノックアウトマウスを作製し、ホモマウスが一見正常に成長することを確認した。(3)に関し、非典型発作性夜間ヘモグロビン尿症患者の異常細胞では、フリーGPIが蓄積し、細胞表面に現れることを証明した。
|