多くのタンパク質の膜アンカーとして機能するGPIアンカーの骨格部分の構造は保存され共通であるが、側鎖によって構造の多様性が生まれる。本研究では、(1)未解明のGPI側鎖形成機構を解明し、GPIアンカーの構造多様性の分子基盤を明らかにする。また、(2)GPI側鎖形成に働く遺伝子のノックアウトマウスを作製して解析し、加えて、これら遺伝子の変異で起こる疾患を発見して、GPI側鎖の生理的意義を解明する。さらに、(3)GPI側鎖研究から見いだした、タンパク質に結合していないフリーGPIの細胞内動態を明らかにする。そして、フリーGPIの異常蓄積が、新規GPI異常症である非典型発作性夜間ヘモグロビン尿症の自己炎症性症状を引き起こす機序を解明して、病理的意義を明らかにする。平成29年度に、Nアセチルガラクトサミンから始まる側鎖にガラクトースを付加する酵素を同定し、それが糖脂質であるGM1ガングリオシドを合成する酵素と同一で、B3GALT4遺伝子の産物であることを見出した。平成30年度は、2つの異なる基質に対してこの酵素の同じ活性部位が働くことと、GPIに働く時には糖脂質であるラクトシルセラミドの存在が必要であることとを見出した。さらに、酵素を過剰発現させればラクトシルセラミドがなくてもGPIに働くことから、ラクトシルセラミドは酵素とGPIの相互作用を促進させると考えられる。次に、タンパク質に結合しないフリーGPIに関して、フリーGPIが一部の組織や細胞株の膜成分として存在していること、小胞体から輸送され細胞表面に発現すること、輸送過程でタンパク質に結合したGPIアンカーと同様に構造が成熟することを示した。また、PGAP4ノックアウトマウスの性状解析を継続した。
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