研究課題/領域番号 |
16H04756
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
伊藤 拓宏 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, ユニットリーダー (70401164)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / 生体分子 / 電子顕微鏡 / 翻訳 / 翻訳開始 |
研究実績の概要 |
前年度までに確立した精製したヒト由来因子によって再構成した試験管内翻訳システムの大量反応系を用いて、クライオ電子顕微鏡を用いた立体構造解析のための試料を調製した。100 uLから200 uLの試験管内翻訳反応液で電子顕微鏡による測定に十分な試料を調製できることを見出した。クライオ電子顕微鏡法を用いてヒトリボソームとHCV IRESのハイジャック後複合体について、3.9Åの分解能で構造決定した。また、ヒトリボソームとHCV IRESのハイジャック前複合体についても試料の調製と電子顕微鏡による測定に成功し、3.9Åの分解能で立体構造を決定した。これらのハイジャック前複合体とハイジャック後複合体の考察により、HCV IRESによる宿主翻訳機構の乗っ取りメカニズムについて新しい説を提唱することが可能になった。この説を更に検証するために、生物物理学的な手法により翻訳イベントの順序を解析することを目指し、ヒト40SサブユニットのRPS25リボソームタンパク質に特異的に蛍光ラベルする手法を確立した。 HCV IRESによる翻訳開始と競合して翻訳開始に機能する翻訳開始因子eIF4Aについて、翻訳阻害剤RocAと連続プリン配列、ATPアナログの4者複合体の結晶構造解析に成功した。本結晶構造によりRocAの翻訳阻害メカニズムの詳細を明らかにすることができた。さらに本研究で確立したヒト由来試験管内翻訳システムを用いて、その機能解析をすすめ、eIF4AにおけるRocAの感受性の鍵となる残基を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としていた標的の構造解析にすでに成功しており、ほぼ計画通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
ハイジャック後複合体とハイジャック前複合体について、さらなる考察を進める。生物物理学的手法を用いて、HCV IRESのハイジャックに関する翻訳イベントの順序の解析を進める。これまでの成果を原著論文として発表することを目指す。
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