研究課題
細胞表面のC型レクチン受容体は、外来成分・自己成分に由来する様々な糖鎖と結合し、細胞内にシグナルを伝達する。C型レクチン受容体の糖鎖リガンド認識の構造基盤については依然として不明な点が多く、特に分岐型糖鎖の枝特異性にはほとんど理解が及んでいない。そこで本研究ではC型レクチン受容体の分岐型糖鎖の認識様式の解明に取り組んだ。これまでのX線結晶構造解析から、ヒトDCIRは2本鎖複合型糖鎖の2糖ユニット(GlcNAcβ1-2Man)を主な認識領域としていることを明らかにしていた。この立体構造を利用してヒトDCIRの分岐糖鎖の認識を検討したところ、ヒトDCIRは2本鎖複合型糖鎖のどちらの分枝も立体障害なく認識し得ることが複合体モデルより示された。この結果はヒトDCIRの幅広い糖鎖結合特異性をよく説明するものであった。一方でヒトDCIRと同じファミリーに属するマウスDCIR2は厳密な糖鎖結合特異性を有し、bisecting GlcNAcを有する糖鎖の1-3分枝を選択的に認識する。ヒトDCIRとマウスDCIR2の立体構造を比較検討したところ、マウスDCIR2のリガンド結合部位に見られるAsp223がその厳密な結合特異性を担っており、Asp223はヒトhDCIRでは保存されていなかった。またこれらのレクチンはいずれもα1-3分枝のManのOH4とタイトに結合しているため、β1-4分岐を含む多分岐糖鎖とは結合しないことが予想された。一方で、α1-6分枝のManからのβ1-6分枝の伸張はヒトDCIRとの結合を妨げないことが予想され、従ってヒトDCIRはβ1-6分枝を持つ多分岐糖鎖とは高い親和性で結合することが予想された。以上よりC型レクチン受容体は共通のフォールドを有しているにも関わらず、リガンド結合部位の特定のアミノ酸残基の違いによって分岐糖鎖結合の特異性を発揮していることを構造生物学的に明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
対象としたレクチンの大量発現と構造解析に成功しており、おおむね当初の計画目標を達成している。
他のC型レクチン受容体やマンノース結合型レクチンにおいても分岐型糖鎖の認識について理解を深めるとともに、リガンド結合後のシグナリングのメカニズムについても構造生物学的なアプローチにより解明を試みる。
すべて 2017 2016
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