研究課題
ジャカリン様マンノースレクチンファミリーに属するレクチンは共通のフォールドを有しているにもかかわらず、それぞれ固有の糖鎖結合特異性を有している。その結合多様性をもたらす構造基盤は不明である。本研究では、ジャカリン様マンノースレクチンと分岐糖鎖の相互作用解析を行った。Calsepaはジャカリン様マンノースレクチンファミリーに属するレクチンであり、バイセクト型分岐糖鎖に対して親和性を有する。これまでの解析からCalsepaはバイセクト型糖鎖の特徴的な折れ曲がり型構造を認識して相互作用することを明らかにしていたが、今回の解析によりCalsepaはバイセクトGlcNAcを持たない2本鎖糖鎖に対してもその折れ曲がり構造を認識していることを明らかにした。このことはCalsepaがバイセクトGlcNAcを直接認識して親和性に寄与しているというよりはむしろ、糖鎖の折れ曲がり構造を認識して結合していることを強く示唆している。一方、同じくジャカリン様マンノースレクチンファミリーに属するOrysataは高マンノース型糖鎖および1-6分枝が伸長した2本鎖複合型糖鎖と結合する。構造解析を行ったところ、OrysataもCalsepaと同様に2本鎖複合型糖鎖を挟み込むように相互作用していたが、結晶構造からはOrysataのリガンド結合特異性を十分説明できるものではなかった。そのため分子動力学計算を行ったところ、Orysataは1-3分枝・1-6分枝のいずれも認識することが可能であり、特に1-3分枝がOrysataと直接相互作用している際に1-6分枝が糖鎖のコア部分に折れ曲がって糖鎖内相互作用を実現し、系の安定化に寄与していることが明らかになった。これは直接レクチンと相互作用していない領域が親和性に寄与することを示しており、分岐糖鎖とレクチンの相互作用を考察する上で重要な知見を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
マンノース結合レクチンの複雑な糖鎖結合特異性の構造基盤の解明に成功しており、おおむね当初の計画目標を達成している。
多分岐型糖鎖の構造とレクチンによる認識についての解析に着手する。また糖鎖リガンド結合にともなうシグナル伝達のメカニズムについて定量的な解析を進める。
すべて 2017
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