研究課題
CRISPR-Cas系は原核生物における獲得免疫に関わる。まず、細胞に侵入してきたファージなどの外来DNAの一部が宿主ゲノムのCRISPR遺伝子座に取り込まれる。続いて、CRISPR遺伝子座から転写されたRNAがプロセシングされ、crRNAが合成される。crRNAはCasタンパク質と会合してエフェクター複合体を形成する。エフェクター複合体はcrRNAと配列相補的な外来核酸と結合し、それらを分解して外来遺伝子の発現を抑制する。エフェクター複合体は数種類のクラスに大別される。本研究では、III型エフェクター複合体の機能構造解析を行った。III型エフェクター複合体は、さらに、III-A型のCsm複合体とIII-B型のCmr複合体に分類される。Csm複合体は5種のCasタンパク質とcrRNAから成り、crRNAと相補的な外来RNAを加水分解する。Csm複合体が働くしくみを解明するために、Csm2の結晶構造を解析した。大腸菌を用いてCsm2の組換えタンパク質を合成し、各種クロマトグラフィーを用いて精製した。SEC分析により、Csm2は溶液中でモノマーであることが判明した。結晶化条件をスクリーニングし、PEG3350を沈殿剤として用いた条件で結晶が得られた。放射光施設を利用してSAD法により結晶の位相を決定した。結晶構造を解析したところ、Csm2はαへリックスから成り、Cmr複合体を構成するCmr5の構造と類似することが判明した。これまでの構造解析から、Cmr5はCmr複合体のヘリカル領域を構成するタンパク質であり、Cmr4や標的RNAと相互作用することを明らかにしている。さらに、Csm3がCmr4と類似していることも明らかにしている。したがって、Cmr5と同様に、Csm2はCsm3や標的核酸と相互作用すること、また、Csm複合体中では多量体化しヘリカル領域を構成することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Csm複合体を構成するCsm2の結晶構造を決定できたため。
III型エフェクター複合体(Csm複合体とCmr複合体)やそれらを構成する個々のタンパク質サブユニットの結晶構造を決定する。また、結晶構造に基づいて変異体を作製し、III型エフェクター複合体が働くしくみを解明する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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