本研究は、例外的遺伝暗号解読に関わるtRNA擬態タンパク質について、真核生物(古細菌)と真正細菌という異なる生物ドメイ ン間での比較解析という複眼的視点による研究実施体制により、【1】tRNA擬態タンパク質が停滞リボソームをどのような分子機構で認識するのか、【2】巨大分子複合体であるリボソームのいずれの基本機能構造領域がその分子機構に関わるのか、 【3】リボソーム停滞の分子機構とmRNAシグナルの全体像等、基礎生物学根幹の謎解明を目的とする研究計画を実施し新規な知見を得る事に成功した。 本研究計画の重要な成果としては、真核細胞モデル系である出芽酵母の系において、停滞リボソームの解消に関わる新規な分子機構の存在を強く示唆する結果を得、モデルとして公表したことが挙げられる。 バクテリアの停滞リボソームの再生反応過程では、標準的なペプチド鎖解離因子RF1/RF2もしくは、リボソーム大サブユニットでペプチド鎖解離反応を触媒するGGQモチーフをもつ解離因子ホモログにより、ペプチド鎖解離反応を経る分子作用機序で最終的に解体反応に至ることが知られている。一方、これまで真核細胞ではこのような経路は知られておらず、停滞リボソームは、tRNA擬態タンパク質複合体であるHBS1/Dom34複合体により認識され、Dom34がペプチド鎖解離反応を引き起ず、取り残されたリボソームをATPaseであるRLI1(ABCE1)が認識しATP依存的に解体反応を触媒することが報告されてきた。 今回、翻訳効率の著しく低い出芽酵母のレアコドンであるCGAコドンを採用したアッセイ系で、CGAにおけるリボソーム停滞では、解離因子によるコドン誤読により停滞状況が解消されることを多角的な検証により示すことに成功しモデルを公表した。現在、先行して公表した上記成果の一般化と詳細な分子機構についての成果の取りまとめを行っている。
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