研究課題
ショウジョウバエをモデル動物として使い、プログラム細胞貪食の仕組みと意義について昨年度に引き続き解析を行った。最終年度の研究では、以前に見いだされた「アポトーシス細胞貪食による食細胞プライミング」の仕組み、および「疾病防止へのプログラム細胞貪食の寄与」を調べた。食細胞プライミングの本体である「転写抑制因子Taillessによる貪食受容体遺伝子の転写促進」の仕組みを解析した。Taillessが直接に標的遺伝子の転写を活性化することは考えにくいため、”貪食受容体遺伝子の転写阻害を行う別の転写抑制因子が存在し、その遺伝子の転写をTaillessが阻害する”と予想した。文献調査によりTaillessの標的となる転写抑制因子Kruppelが見つかり、食細胞においてKruppelが貪食受容体のDraperとインテグリンをコードする遺伝子の転写阻害に働くことが示された。さらに、食細胞でのTailless活性化の仕組みとして脱リン酸化が示唆された。よって、アポトーシス細胞を貪食した食細胞では、Taillessが脱リン酸化で活性化→TaillessがKruppel遺伝子の転写を阻害→Kruppelの減少によりDraperとインテグリンの遺伝子の転写阻害が解除→Draperとインテグリンが増加→貪食活性が亢進、という経路が予想された(論文投稿中)。プログラム細胞貪食によるウイルス感染症防止の仕組みを知るためにウイルス感染でのアポトーシス誘導機構を調べたが、確かな結果は得られなかった。一方、ウイルス感染が癌化を軽減させることがわかった(Virology 2019)。これは、ウイルス感染によって食細胞がプライミングを受けて貪食活性が高まり癌細胞が貪食除去されたためであると考えられた。さらに、貪食受容体の発現を抑制すると癌化の程度が高まることがわかった。よって、プログラム細胞貪食が癌の防止に働くと結論された(論文準備中)。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Virology
巻: 528 ページ: 48-53
https://doi.org/10.1016/j.virol.2018.12.008
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 506 ページ: 510-515
https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2018.10.096