研究課題/領域番号 |
16H04764
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小椋 光 熊本大学, 発生医学研究所, 教授 (00158825)
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研究分担者 |
江崎 雅俊 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (70437911)
山中 邦俊 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (90212290)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子シャペロン / タンパク質分解 / タンパク質の品質管理 / プロテアソーム / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
AAA型シャペロンp97(ヒトではVCP、線虫ではCDC-48、酵母ではCdc48)の作用機構を明らかにする目的で遺伝生化学的解析を行い、以下のことを明らかにした。酵母のM228Y変異Cdc48と20Sプロテアソームから構成される新規プロテアソームの存在を遺伝生化学的手法により証明した(Esaki et al., 2017)それにより分解されるいくつかの細胞内基質候補を同定した。そのうちの1つはSod1 (superoxide dismutase)であった(Esaki et al., 2017)。精製標品によるin vitro再構成系においてSod1がM228Y変異Cdc48-20Sプロテアソームにより、ATP依存的に分解されることを明らかにした。今後このin vitro反応系を用いて、詳細な分子機構を解明する。ヒトにおいて、VCP及びSod1の変異により筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症することが知られており、今後p97-20SプロテアソームによるSod1の分解がALSと関連するかどうかを明らかにすることは興味深い。 リボソーム品質管理(RQC)におけるp97の機能を解析するため、RQCに関与するp97のアダプタータンパク質を酵母で網羅的に探索したところ、これまでに同定されていたUfd1-Npl4ヘテロダイマーに加え、Ufd2が同定された。また、アダプターではないが、シャトル因子Rad23も効率的なRQCに必要であることを明らかにした。これにより、RQCのin vitro再構成に必要な因子が同定できたので、これらの因子の精製を始めた。 ヒトp97ホモログVCPによるTDP-43アミロイド線維の脱凝集解析は、アミロイド線維の形成条件の検討が不十分で、解析に使用できる線維が得られていないため、in vitro解析に至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規プロテアソームp97-20Sプロテアソームの存在を証明し、これによるin vitro基質分解系の確立にほぼ成功したので、これを用いて、種々の解析が可能となった。そこから、神経変性疾患ALSの発症機序にも新たな知見が得られる可能性が出てきた。 また、リボソーム品質管理機構に関わる因子の同定が終了し、すべての因子の精製に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
新規プロテアソームp97-20Sプロテアソームによるin vitro基質分解系を用いて、種々の基質の分解について解析する。基質及びp97の変異による分解効率の変化などから、p97の機能を解明する。また、基質の1つSod1の分解効率・様式から、神経変性疾患ALSの発症機序の手掛かりを得る。 リボソーム品質管理機構に関わるすべての因子の精製に着手しているので、これらを用いたin vitro再構成系の確立をめざす。ただし、その再構成系が機能しないときは、個々の因子の相互作用などについて解析し、分子機構の解明を図る。 ヒトp97ホモログVCPによるTDP-43アミロイド線維の脱凝集解析は、アミロイド線維の形成条件の検討が不十分で遅れているが、条件検討を済ませ、実施する。 全体として、計画の大きな変更はない。
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