銅・亜鉛イオンを結合したSOD1に過酸化水素を作用させると、Cys111のSHがSOHに酸化されるものの、タンパク質構造には大きな変化が見られなかった。しかし、酸化されたSOD1から銅・亜鉛イオンを解離させると、タンパク質構造が大きく揺らぎ、通常は遠く離れた位置にあるCys6のSHがCys111のSOHを求核攻撃することで、Cys6とCys111の間でS-S結合が形成した。つまり、酸化ストレスの増大と銅・亜鉛イオンの解離によって、2つのS-S結合を持った異常なSOD1(SOD12xS-S)が形成することを見出した。 正常なSOD1はホモ二量体として存在し、それぞれのサブユニットは8本のβ-ストランドからなる。そこで、SOD12xS-Sの構造的な特徴を見い出すために、フーリエ変換型赤外分光法、多角度光散乱、X線小角散乱により解析したところ、β-ストランドからなる構造を有していたものの、単量体化し、慣性半径が増加したコンフォメーションに変化していることがわかった。また、SOD12xS-Sを振盪すると凝集し、β-シート構造を有した不溶性の沈殿になったが、アミロイドに見られるような線維状の形態は確認されなかった。 また、SOD12xS-Sを運動ニューロン様の培養細胞であるNSC-34に添加すると、生細胞数が減少し毒性を示すことがわかった。金属イオンを結合していないアポ型SOD1もNSC-34に対して毒性を発揮するものの、これは培地に含まれる亜鉛イオンをSOD1がキレートするためであるとされている。実際、アポ型SOD1に亜鉛イオンを添加してからNSC-34に加えると、毒性は見られなくなった。一方で、SOD12xS-Sに亜鉛イオンを添加しても、NSC-34に対する毒性は変化しなかったことから、SOD12xS-Sは正常なSOD1にはない性質を有することがわかった。
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