研究課題/領域番号 |
16H04772
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
豊島 陽子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (40158043)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ダイニン / ダイナクチン / 運動調節機構 / CC1ドメイン / K-richドメイン / 分子内制御機構 |
研究実績の概要 |
ダイニンの細胞内での制御因子としてダイナクチンが知られている。ダイニンの自己抑制状態であるstack構造をダイナクチンが解除しているのではないかという仮設にたち、ダイナクチンによるダイニンの運動制御機構を明らかにすることを試みた。 ダイナクチンの主要サブユニットであるp150(DCTN1)には、スプライシングアイソフォームであるA型とB型がある。両者にはダイニン結合部位であるCC1ドメインが存在するが、B型はA型に存在するK-richドメインを欠いている。これらのドメインの有無とダイナクチン自身の微小管結合能、およびダイニンの微小管結合に対するダイナクチンの影響について、1分子観察と共沈実験から結合能力を評価した。A型ダイナクチンは微小管上をdiffusiveに動く微小管との結合性を示したが、B型ダイナクチン自身はほとんど微小管との相互作用を示さなかった。CC1ドメイン欠くダイナクチンにおいて、A型はダイニンの結合を高めたが、B型はダイニンの微小管結合を阻害した。また、CC1ドメインのフラグメントにより、ダイニンの微小管結合は阻害された。これらの結果から、K-richドメインはダイニンおよびダイナクチンの微小管結合を促進すること、ダイナクチンのCC1ドメインはダイニンの微小管結合を阻害すること、K-richドメインはその阻害効果を弱めて微小管結合を可能にしていること、が判明し、ダイナクチンに1分子内にダイニンの運動機構を促進するドメインと阻害するドメインの両方を保持していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
巨大で複雑な分子であるダイニンと、同じく巨大で複雑なダイナクチンの相互作用によるダイニン運動の制御機構の実態が明らかになり、複雑な制御機構の詳細が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
ダイナクチンによるダイニン制御の機構について、微小管上の分子の挙動の面で新たな知見を得ることができたが、このときのダイニンの構造については未解明である。今後、ダイナクチンがダイニン構造にどのような影響を与えるのかについて、調べていきたい。
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