研究課題/領域番号 |
16H04775
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 敬宏 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定拠点准教授 (80423060)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 接着斑 / アクチン骨格 / 拡散運動 / 1分子計測 / 超解像 |
研究実績の概要 |
本研究は、「接着斑は、細胞質中/細胞膜上の拡散で常にダイナミックに構成分子が交換している島を単位とし、それが多数集まることによって形成されている」という、「接着斑動的群島仮説」の正否の検証を目的とする。この目的を達成するため、私がこれまで開発してきた超高速・超解像1蛍光分子局在顕微鏡法を駆使して、以下の5段階で研究を推進する。[1] 群島の生細胞超解像-接着斑構成分子の高速1蛍光分子同時観察、[2] 接着斑内のアクチン骨格構造の3 次元超解像観察、[3] 群島構造の超解像定量、[4] 群島ダイナミクスの超解像マッピング、[5] 硬さの異なる基質に対する群島ダイナミクスの応答検出。本年度は [1]、[2]を目標とし、以下の研究進捗があった。 (1) 群島を超解像観察で可視化しながら、高速1蛍光分子運動追跡 膜貫通型受容体分子(トランスフェリン受容体、接着斑の主要な接着分子インテグリン)の高速1 蛍光分子追跡をおこない、受容体分子は群島構造の隙間のアクチン膜骨格の網目の間を飛び移る拡散運動 (ホップ拡散) を示すこと、接着斑内部の網目のサイズと網目あたりの滞在時間は、外部に比べて2/3程度と小さく約1.5倍長いこと、を見出した。また、インテグリンの接着斑内での停留は、超解像観察(マーカー分子パキシリン)で可視化した群島上で有意に起こることが明らかになった。 (2) 接着斑内のアクチン骨格構造の3次元超解像観察 本研究課題で購入したZピエゾステージを顕微鏡システムに設置し、非点収差法による3次元追跡光学系の高位置精度Zキャリブレーションを完了した。Lifeact-Dronpa、Lifeact-mEosをアクチン線維のプローブとして超解像観察をおこない、接着斑内のアクチン骨格構造(ストレスファイバー終端、膜骨格の網目構造)の短時間(数秒以内を目標)での超解像画像取得の条件決めを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
接着斑内では、細胞膜からの距離依存的に構成分子種(インテグリン、パキシリン、タリン、ビンキュリン)の密度が異なることが報告されている。また、接着斑を終端とするストレスファイバー端は、細胞膜から50 nm程度離れているという報告があるので、ストレスファイバー、接着斑構成分子、細胞膜に近接したアクチン骨格が、どのような位置関係にあるのかを理解するためには、3次元超解像観察が必要となる。28年度は、高位置精度での3次元超解像-1蛍光分子同時観察を可能にする顕微鏡システムを完成し、本研究の作業仮説「接着斑動的群島仮説」を本格的に検証するための準備が整った。また、動的な群島構造の超解像画像を、短時間の観察(数秒以内)で取得するためのハードウエア制御、超解像画像再構成のための画像処理ソフトウェアの改善を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 接着斑内のアクチン骨格構造の3次元超解像観察 28年度に完成した顕微鏡システムにより、ストレスファイバー端が群島間の1分子拡散運動に影響するかどうか、すなわち、ストレスファイバー端と群島間の隙間の網目構造は、構造的にどのような関係にあるのか、を調べる。 (2) 群島構造の超解像定量 インテグリン、パキシリン、タリン、ビンキュリンなどの群島構成分子の超解像観察により、島のサイズ、島あたりのそれぞれの分子数、群島が接着斑内で占める面積の割合を定量する。2色3次元超解像観察により、異種構成分子間で島の場所が一致するか、また、Z方向の分布はどうなっているかを調べる。 (3) 群島ダイナミクスの超解像マッピング 島単位で決めたサイズ、構成分子の個数、構成分子の滞在時間について、接着斑内でマッピングをおこなう。それにより、島によって構成分子の出入りが激しい動的な状態や、構成分子の滞在時間が長い安定な状態が存在するか、また、接着斑内の場所によって、島の状態に局所的な相関があるか、を調べる。分オーダーのタイムラプス観察により、島単位の寿命、動きが、接着斑の形成/分解過程とどのようにカップルしているか、を調べる。
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