本研究は、「接着斑は、構成分子がダイナミックに拡散で出入りしている島を単位とし、それが多数集まることによって形成されている」という、「接着斑動的群島仮説」の正否の検証を目的とする。[1] 群島の生細胞超解像-構成分子の高速1蛍光分子同時観察、[2] 接着斑内のアクチン骨格構造の3次元超解像観察、[3] 群島構造の超解像定量、[4] 群島ダイナミクスの超解像マッピング、[5] 硬さの異なる基質に対する群島ダイナミクスの応答検出、の5段階の研究計画のうち、本年度は [3]、[4] を中心に推進し、以下の進捗があった。 (1) 接着斑構成分子パキシリンノックアウト MEF 細胞に、超解像蛍光タンパク質プローブ mEos3.2 を融合したパキシリンを安定発現させた。野生型 MEF における内在性のパキシリンと同程度、mEos3.2-パキシリンを発現したクローン株を得て、生細胞超解像観察をおこない、クラスター解析により群島構造の定量解析をおこなった。 (2) 新規の膜透過型 PALM 用蛍光色素 (PA-JF646) による接着斑近傍のアクチン骨格構造(ストレスファイバー終端、膜骨格の網目構造)標識方法を最適化し、接着斑マーカーである mEos3.2-パキシリンとの2色同時生細胞超解像観察をおこなった。 (3) mEos3.2-パキシリンをマーカーとして接着斑を観察しながら、インテグリン分子の3次元タイムラプス1分子追跡 (4 Hz/5分間) をおこなった。接着斑構成分子の接着斑近傍へのリクルート機構として、細胞膜上の拡散だけでなく、細胞内の方向性小胞輸送による濃縮が関与している可能性が示唆された。
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