F1-ATPase の ATP 加水分解反応に対するアロステリック効果の分子機構 前年度に引き続き QM/MM RWFE-SCF 法を用いてリン酸結合部位でのリン酸脱離状態における ATP 加水分解反応の反応遷移状態の自由エネルギー構造最適化を行った。現時点で、構造最適化計算は収束に至っておらず、構造最適化計算を継続中である。また、リン酸結合状態では、γサブユニットを回転させた初期構造を用いた MD シミュレーションによるモデリングを行った。その結果、これまでとは異なる角度での安定構造を捕捉し、QM/MM 自由エネルギー構造最適化計算の出発構造を得るために、平衡シミュレーションを行った。
LOV ドメインの光活性化機構 発色団分子にタンパク質のシステイン残基が付加した光活性化状態生成に関して、シミュレーションの再現性を検討するべく、長時間 MD シミュレーションから得た 3 つの異なる初期構造から QM/MM RWFE-SCF 自由エネルギー構造最適化計算を行い、光活性化に伴う構造変化を調べた。その結果、いずれの初期状態から開始した自由エネルギー構造最適化計算においても、発色団分子近傍におけるアミノ酸側鎖構造の顕著な変化と水分子の侵入、及びそれによりトリガーされるシグナル伝達ヘリックスの大きな構造変化を観測することに成功した。
HIVプロテアーゼの触媒活性 昨年度の研究で、CCSD(T) 計算を用いた計算により、妥当なエネルギーを与える密度汎関数を決定した。本年度は、その汎関数を用いて、基質ペプチド分子の反応始状態及び中間状態に対して、QM/MM RWFE-SCF 自由エネルギー構造最適化計算を行い、収束構造を得た。自由エネルギー摂動法を用いて、始状態と中間状態の間の自由エネルギー差を計算した。その結果、実験を良く説明する反応中間状態を得ることに成功した。
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