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2017 年度 実績報告書

細胞膜との相互作用によって制御される細胞内シグナル伝達の分子メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 16H04780
研究機関横浜市立大学

研究代表者

木寺 詔紀  横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (00186280)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードタンパク質 / 分子シミュレーション / シグナル伝達
研究実績の概要

MAPKパスウェイの初期段階の中核を担うRasによるSOSのアロステリック制御機構を分子シミュレーションによって研究することが目的である。29年度は、Ras-SOS相互作用についてのシミュレーション解析を行った。SOS活性化後の、アロステリックサイトへのRas(GDP型、GTP型)の結合に伴い、helical hairpin(947-973)[これが、Rasのswitch 1を開きGDPの解離、GTPの再結合につなげるSOS Cdc25ドメインの構造要素。Remドメインの一部として動く]の構造にどう影響を与えるかを検討した。シミュレーション結果の解析から、アロステリックサイトへの結合で、非結合 < Ras(GDP) < Ras(GTP)の順に、helical hairpinがCatalytic Rasのswitch 1を拡げる方向に構造変化し、実験情報と定性的に整合する結果が得られた。この構造変化は、Remドメイン+helica hairpinとCdc25の残りの部分との大規模なドメイン運動によって実現されることが分かった。また、アロステリックサイトへ結合するRasが、GDP型かGTP型かの違いによって全体構造に大きな影響が及ぶのは、アロステリックサイトに結合したRasのswitch1がGDP→GTPに伴ってより閉じた構造になり、RemとCdc25の間に挟まれた部分に結合したRasのわずかな構造変化がドメインの相互配置に増幅されて反映されることが原因であり、Rasの構造→アロステリックサイトへの結合→helical hairpin(触媒サイト)の構造、という情報の伝達が、Cdc25とRem+helica hairpin間のドメイン運動によって引き起こされることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

28年度は、SOSのシグナル受容に伴う活性化(DHドメインとRemドメインの相互配置の変化)、29年度は、活性化後のRasとの相互作用の研究(RemドメインとCdc25ドメインの相互配置の変化)を行ってきた。それぞれに、大規模な構造変化を生む機構について、実験結果と整合するシミュレーション結果が得られている。これらふたつの機構についてはその生起が順に起こるところから別に議論するべきであるが、SOS活性化については、RemドメインとCdc25ドメインとの相互作用が重要な役割を果たしているところから、全長のシミュレーションがどうしても必要となり、大きな研究上の障害になっている。また、現状で分かっている構造変化の範囲内では、閉じた構造のRas(GDP)は触媒サイトに結合することはできないと考えられる。そのため、単独状態でswitch 1を開いたRas(GDP)がかなり安定的に(長時間)存在することを示す必要がある。最終的な描像を描くところにまだ試行錯誤的な要素を残すことから「おおむね」という評価とした。

今後の研究の推進方策

これまでに、実験と整合したシミュレーション結果が得られてはいるが、それらは非活性型→活性型、Ras非結合型→Ras結合型の間の構造変化を直接示すものではない。そこで、最終年度はSOS活性化に焦点を絞り、MSES法による拡張サンプリングによって、自己阻害型からの脱出の機構を明らかにすることに注力したい。それとは別に、単独状態でswitch 1を開いたRas(GDP)がかなり安定的に(長時間)存在することをkineticsを追うことのできるweighted ensemble法を使って明らかにしたい。これは、上記の拡張サンプリングの結果から、helical hairpinの運動は、活性化状態において十分に限定的であることが示されることによって初めて意味を持つ。これらふたつのシミュレーション研究でSOSの機能発現の全体像を明らかにすることができるものと期待している。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Energetics and conformational pathways of functional rotation in the multidrug transporter AcrB2018

    • 著者名/発表者名
      Matsunaga Yasuhiro、Yamane Tsutomu、Terada Tohru、Moritsugu Kei、Fujisaki Hiroshi、Murakami Satoshi、Ikeguchi Mitsunori、Kidera Akinori
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 7 ページ: e31715 1-19

    • DOI

      10.7554/eLife.31715

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ionic scattering factors of atoms that compose biological molecules2018

    • 著者名/発表者名
      Yonekura Koji、Matsuoka Rei、Yamashita Yoshiki、Yamane Tsutomu、Ikeguchi Mitsunori、Kidera Akinori、Maki-Yonekura Saori
    • 雑誌名

      IUCrJ

      巻: 5 ページ: 348~353

    • DOI

      10.1107/S2052252518005237

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Structure of the Dnmt1 Reader Module Complexed with a Unique Two-Mono-Ubiquitin Mark on Histone H3 Reveals the Basis for DNA Methylation Maintenance2017

    • 著者名/発表者名
      Ishiyama S、Nishiyama A、Saeki Y、Moritsugu K、Morimoto D、Yamaguchi L、Arai N、Matsumura R、Kawakami T、Mishima Y、Hojo H、Shimamura S、Ishikawa F、Tajima S、Tanaka K、Ariyoshi M、Shirakawa M、Ikeguchi M、Kidera ASuetake I、Arita K、Nakanishi M
    • 雑誌名

      Molecular Cell

      巻: 68 ページ: 350~360.e7

    • DOI

      10.1016/j.molcel.2017.09.037

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nature of self-diffusion in two-dimensional fluids2017

    • 著者名/発表者名
      Choi Bongsik、Han Kyeong Hwan、Kim Changho、Talkner Peter、Kidera Akinori、Lee Eok Kyun
    • 雑誌名

      New Journal of Physics

      巻: 19 ページ: 123038~123038

    • DOI

      10.1088/1367-2630/aa997d

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Molecular mechanism of the phosphorylation-driven enhancement of the HP1aCD/H3K9me complex formation revealed by replica-exchange molecular dynamics simulation2018

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Omori, Kei Moritsugu, Yoshifumi Nishimura, Akinori Kidera
    • 学会等名
      The 62nd Biophysical Society Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 大規模シミュレーションによるグルコキナーゼ活性化機構の解析2018

    • 著者名/発表者名
      森次圭, 寺田透, 木寺詔紀
    • 学会等名
      日本物理学会第73回年次大会
  • [学会発表] プロテインキナーゼの立体構造データベース解析2017

    • 著者名/発表者名
      森次 圭、西野 圭彦、木寺 詔紀
    • 学会等名
      第17回日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] Multiscale enhanced sampling for glucokinase2017

    • 著者名/発表者名
      Kei Moritsugu, Tohru Terada, Akinori Kidera
    • 学会等名
      Biophysical Society Thematic Meeting: Conformational Ensembles from Experimental Data and Computer Simulations
    • 国際学会
  • [学会発表] Comprehensive database analysis of protein kinase structures2017

    • 著者名/発表者名
      Kei Moritsugu, Yoshihiko Nishino, Akinori Kidera
    • 学会等名
      CBI学会2017年大会

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公開日: 2018-12-17  

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