研究課題/領域番号 |
16H04782
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田口 友彦 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (10300881)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞増殖 / リサイクリングエンドソーム / YAP / ホスファチジルセリン / E3 リガーゼ |
研究実績の概要 |
前年度までに、リサイクリングエンドソームのホスファチジルセリン(PS)近傍蛋白質をBirA*法により同定し、同定した蛋白質の中に細胞増殖を制御する転写コアクチベーターYAPおよびYAPを負に制御するHippo経路の蛋白質が含まれていることを見出していた。平成29年度は、リサイクリングエンドソームのPSとYAP・細胞増殖との関連を検討し、以下の結果を得た。 (1)リサイクリングエンドソームの細胞質側脂質層のPS量を制御するPSフリッパーゼATP8A1(PSをルーメン側脂質層から細胞質側脂質層にフリップする酵素)のノックダウンにより、細胞増殖が低下すること、YAPの不活化体(リン酸化体)が増加すること、YAPキナーゼであるLats1の活性化体(リン酸化体)が増加することを見出した。 (2)リサイクリングエンドソームの細胞質側脂質層のPSによってリサイクリングエンドソームに局在化するevectin-2のノックダウンにより、細胞増殖が低下すること、YAPの不活化体(リン酸化体)が増加すること、YAPキナーゼであるLats1の量が増加することを見出した。同様の結果が、evectin-2結合タンパク質として申請者が同定したNedd4 E3リガーゼ(Itch、WWP1、WWP2)のノックダウンによっても認められていることから、evectin-2/Nedd4 E3リガーゼ複合体によるLats1の分解が示唆された。(1)および(2)の結果は、Nature Communicationsに公表した。 (3)リサイクリングエンドソームのPS近傍蛋白質の中に14種類のprotein phosphataseが含まれていたが、その中の幾つかがYAP・Hippo経路を制御する可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
リサイクリングエンドソームの新しい機能として、YAPの活性化を通じた細胞増殖の制御を見出した。またその分子機構として、リサイクリングエンドソームのPSによるYAPの脱リン酸化制御およびYAPキナーゼLats1の量の制御があることを明らかにした。リサイクリングエンドソームの新しい機能を見出したことに加え、その分子メカニズムまで示唆することができたことから、当初の計画以上に研究は進展しているものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
リサイクリングエンドソームのPSが如何にYAPの脱リン酸化(活性化)を制御しているのか、その機構を明らかにする実験を進めて行く。特に、申請者が同定したリサイクリングエンドソームのPS近傍蛋白質の中には14種類のprotein phosphataseが含まれていたが、そのうちの幾つかがYAPを正に制御している可能性を既に見出しており、最優先で検討を行う。 YAP経路の異常な活性化は細胞のがん化と密接につながっていることが知られている。がん細胞において、申請者が同定したYAPを正に制御する蛋白質(evectin-2、ATP8A1、Nedd4 E3リガーゼ)をノックダウンし、がん細胞の増殖能を低下させることができるか検討する。
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