研究課題
タイトジャンクション(TJ)は上皮細胞のバリア機能を担う細胞膜構造である。バリア機能の破たんは慢性的な抗原や病原菌の体内への侵入を許し、アトピー性皮膚炎や潰瘍性大腸炎などの慢性炎症の原因となる。このため、TJのもつバリア機能を人為的に制御する方法論を開発することは医学的に重要な課題である。TJの主たる細胞接着分子は4回膜貫通タンパク質のクローディンである。発現ベクター等によってクローディンを過剰に上皮細胞に発現させても、TJの形成が拡大したり、上皮細胞のバリア機能が亢進することはない。従って、バリア機能を担う細胞膜構造としてのTJの形成はクローディンの発現量の調節以外の方法で制御されていることが示唆されるが、そのような分子機構は殆ど明らかになっていない。TJの形成メカニズムを理解する上で、申請者はTJの特徴的な細胞膜構造の理解が重要であると考えて、TJ領域の細胞膜脂質組成の解析を試みた。申請者は、先行研究において細胞膜を物理的に単離してその脂質組成の解析を行う方法論を確立した(Ikenouchi et al. J Biol.Chem 2012)。この方法論を用いてTJを形成している細胞膜の脂質組成を明らかにする実験を行った。その結果、興味深いことに、TJ領域にはコレステロールや極長鎖脂肪酸を脂肪酸鎖として有するスフィンゴミエリンが豊富に存在することを見出した。形質膜からコレステロールを除去すると、TJの形成は顕著に障害されることが明らかになった。また形質膜のコレステロール量を調節する仕組みとして、新たにアドヘレンスジャンクションの形成が関与することを明らかにした。これらの知見をShigetomi et al. J Cell Biol 2018に報告した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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