研究課題/領域番号 |
16H04787
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 政充 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (50447356)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞骨格 / 微小管 / 細胞分裂 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
本研究は細胞内に存在する小器官のひとつである微小管の新規機能を発見しつつ,微小管が細胞内でどのような制御を受けているかを解明することを目標としている。また,微小管に関与する因子をコントロールすることで,微小管を人工的に制御可能になるのではないかと考え,その開発に取り組んでいる。さらに,細胞内での微小管の挙動が,動物組織のなかでどのような意義を持つのかについても解明を目指している。 本年度は,(1)分裂酵母を用いた微小管形成の分子メカニズムの追究,(2)ほ乳類培養細胞における微小管の可視化と分子メカニズムの検証,(3)実験動物を用いた実験系を研究室にセットアップして組織標本を観察すること,の3点を目標として研究を展開した。 その結果,(1)では細胞質に微小管が形成される際にAlp7タンパク質が微小管の重合形成に関与する際の具体的な作用機序について進展が得られた。これによって,これまでγチューブリンのみがクローズアップされてきた微小管の形成の分子機構が飛躍的に解明されると期待している。この成果を(2)のほ乳類培養細胞にも応用し,Alp7のオーソログであるTACC3が微小管形成を誘導するか観察している。現時点ではTACC3も人工的遺伝子操作を施すことで微小管の安定化を引き起こす結果を得ており,微小管形成の分子機構が種を超えて保存されている点,および種により異なる多様性についての知見が得られつつある。さらに,(3)では,マウスの組織から標本を作製するまでの実験系を研究室に導入する第一段階に成功し,現在は組織切片における微小管の動態について観察を進めている。これまでのところ,微小管構造を一定方向に配列させるために重要な機能を果たすCAMSAP3の局在と微小管について観察し,どのように微小管編成が起きるのか,これまでまったく未知であった分子システムが明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の開始時点では,前年度における動物実験系のセットアップの遅れがあったが,その後研究を重点的におこなうことで,本年度末の段階では,当初の目標通りの到達度を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を継続し,引き続き動物実験の立ち上げをおこないながら,分裂酵母の実験系についても総仕上げをおこなう。変異体マウス・ノックアウトマウスの作製あるいは導入については引き続き実験系の立ち上げが続くが,技術的に困難な点も予想される。培養細胞における実験系には,ゲノム編集技術を導入するため,定着まで時間を要する可能性があるが,分裂酵母と同様の分子システムが作動しているのかを検証するために不可欠な技術導入であるため,重点的に取り組む。
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