研究課題/領域番号 |
16H04788
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
千葉 志信 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (20523517)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | YidC / タンパク質膜組込 |
研究実績の概要 |
枯草菌は、タンパク質膜組込装置YidCのホモログを二つ持つ (SpoIIIJ、YidC2)。第一のホモログSpoIIIJの活性低下に呼応して、第二のホモログYidC2の発現が上昇する。そのため、YidC2をコードする遺伝子のほとんどをLacZに置き換えたyidC2'-lacZレポーターを持つ株は、細胞のYidC活性の低下に呼応してb-ガラクトシダーゼ活性を上昇させる。 本研究では、このレポーターを利用し、YidCの機能解析や、YidCを阻害する化合物のスクリーニングを進めてきた。前年度までに、YidCを阻害する化合物のスクリーニングを行い、レポーター株のb-ガラクトシダーゼ活性を上昇させる化合物を複数得たが、これらの化合物のYidC活性阻害効果をレポーターアッセイで確認したところ、期待したほどの阻害効果を示す結果は得られなかった。そこで、本年度は、化合物のスクリーニングをさらに進め、新たな候補化合物を得た。これらについて、濃度依存性などを確認したところ、新たに得られた候補化合物の中には、これまで得られたものよりもレポーターが大きく反応するものが含まれていることが分かった。このことは、新たなスクリーニングにより、より強いYidC活性阻害効果を持つ化合物が得られた可能性を示唆している。今後、さらに化合物スクリーニングを継続しつつ、新たに得られた候補化合物のYidC阻害効果の検証を進める必要がある。 また、新規YidC基質としてあらたに複数の膜タンパク質を同定した。これらには、YidC基質に共通の特徴である細胞外領域の負電荷アミノ酸がない。このことから、これまで提唱されてきた膜挿入機構とは異なる機構で膜挿入が起こっている可能性が浮上した。これらについて、YidC変異の効果を検証する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
YidCの活性を阻害する化合物は、YidC依存的なタンパク質膜組込の研究を進展させる上で、研究ツールとして有用であると思われる。これまでに、YidCを阻害する活性を持つ化合物は報告されていないため、そのようなものが得られれば、意義深い。この、YidCの活性を阻害する化合物のスクリーニングが順調に進展している。前年度からさらにスクリーニングの対象を広げたことで、以前に得られたものよりもさらに有力と思われる化合物が、YidC阻害剤の候補として得られてきた。 YidCの活性を測定するためのレポーター系を改変する過程で、YidCの新規基質と思われるものが複数見出された。興味深いことに、これらは、MifMのような既知の基質にみられる膜挿入に必要な性質を欠いている。このことは、MifMとこれらの膜タンパク質は、異なる性質に依存してYidCによって膜挿入していることを示唆している。予想外の結果ではあるが、基質によって膜挿入の機構に違いがある可能性が浮上しており、興味深い。
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今後の研究の推進方策 |
(1)YidCの活性を阻害する化合物の探索: YidC活性を阻害する化合物の探索を引き続き行う。一方で、既に得られた候補化合物について、そのYidC阻害効果を、さらに検証する。YidCの活性に対する化合物の影響を調べるため、YidC活性の評価系を立ち上げる。枯草菌の系を用いて行うが、一方では、大腸菌の系を導入することを検討する。これらを確立したら、既に得られた化合物について、その阻害効果をさらに検証する。 (2)YidCの新規基質の膜挿入におけるYidC変異の効果の解析 YidCの新規基質が見出されたが、これらは、既知の基質MifMが有する膜挿入に必要な性質を欠いている。このような基質がどのような性質に依存して膜挿入されるのかを検討することで、YidC依存的タンパク質膜挿入の機構に迫る。その目的のため、基質やYidCの変異の膜挿入に対する効果を検証し、膜挿入に重要な基質、YidCの性質を明らかにする。
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