研究課題
(1) 細胞周期進行遺伝子の発現がマウス心筋細胞では抑制され、イモリでは抑制されない機構 イモリおよびマウスのcyclin D1 プロモーター+蛍光遺伝子のコンストラクトを作製し、イモリおよびマウスのトランスジェニック (Tg)動物を作製した。いずれの動物のプロモーターでもTgイモリ胚では類似した蛍光パターンが得られた。現在、再生実験が可能となるステージまで成長するのを待っている。一方、マウスcyclin D1プロモーターを持つTgマウス胚は予想される組織での発現が確認された。イモリcyclin D1プロモーターを持つTgマウスの発現は検討中である。これらTgマウスは29年度に系統化し、心臓や肝臓の損傷実験を行なう。(2) イモリ心臓再生で発現変化する遺伝子とその制御領域、エピゲノム情報の取得 イモリでは他のモデル動物と比べ、圧倒的にトランスクリプトーム情報が不足している。特に完全長のmRNAデータと遺伝子種の網羅度が低い。そのため、心臓に加え、胚、幼生、四肢再生芽でまず、トランスクリプトーム解析を行ってその充実をはかった。また、ゲノム支援を受けて胚、再生芽、心臓でTSSシークエンスとH3K4me3のChIPシークエンスを行い、前者は得られたデータを解析中である。後者はゲノム支援からのデータ提供を待っているところである。(3) 細胞周期進行遺伝子の発現がマウス心筋細胞では抑制され、肝実質細胞では抑制されない機構の解明 マウス肝再生におけるcyclin D遺伝子を含む細胞周期進行の基本因子のmRNAの発現解析を行なった。その結果、主要サイクリン、CDK、cdc25遺伝子の全てが肝切除後2日をピークに有意な上昇を示した。また、CDK1の活性化も確認された。三つのcyclin Dのサブタイプのうち、cyclin D1のみがmRNAレベルおよび蛋白質レベルの両方で発現が増加した。
2: おおむね順調に進展している
上記(1)では、本研究の基盤となるTg動物の作製が順調に進行している。 (2)では、本研究の遺伝子解析の基盤となるトランスクリプトームとエピゲノムデータの取得が順調に進行している。また、(3)では肝臓と心臓では損傷後の細胞周期進行因子の反応が大きく異なることを確認し、同時にcyclin D1プロモーターに注目することで肝臓と心臓の再生能の違いについて解析できることが明らかになった。以上から、順調に進行していると判断した。
(1)についてはTg動物の作製や系統化を進めるとともに心臓や四肢の切除を行い、蛍光遺伝子の発現変化を蛍光もしくはmRNAの定量解析で検討する。また、さらに様々なプロモーターの領域をもつTgイモリを作製し、切除に応答する領域の絞り込みを開始する。(2)では、昨年度入手したTSSシークエンスとH3K4me3のChIPシークエンスの元データからcyclin D, cdc25遺伝子等注目する遺伝子の基本情報を抽出、構築する。cyclin D1 については(1)の応答領域の絞り込みに役立てる。また、心臓再生前後でのChIPシークエンスも行なう。(3)では、(1)で作製したマウスcyclin D1プロモーター+蛍光遺伝子Tgマウスで肝切除を行い、蛍光遺伝子の発現変化を(1)同様の手法で検討する。この実験で発現上昇が確認できた場合は、HtVi法により様々なプロモーターの領域のベクターを導入することで、切除に応答する領域の絞り込みを開始する。一方、肝臓の小規模再生では細胞分裂が起こらない。この原因が心臓と同じ原因(cdc25遺伝子の発現増加が起こらない)か否かを検討する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 10件) 備考 (2件)
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