研究課題/領域番号 |
16H04794
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
竹内 隆 鳥取大学, 医学部, 教授 (70197268)
|
研究分担者 |
荻野 肇 広島大学, 両生類研究センター, 教授 (10273856)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 再生現象 / 心臓肝臓 イモリマウス / 肝臓 イモリマウス / イモリマウス / マウス |
研究実績の概要 |
(1) 細胞周期進行遺伝子の発現がマウス心筋細胞では抑制され、イモリでは抑制されない機構 イモリcyclin D1 プロモーター+蛍光遺伝子のトランスジェニック (Tg)イモリを用いて心臓切除実験を行ったところ、同一個体の心室内、および個体間で発現パターンが異なること、心臓切除そのものによりライブ観察では蛍光強度が変化することが判明した。これらのことから系統化した均一な個体群でqPCRと組織染色を用いて比較する方向を検討している。また、マウスcyclin D1プロモーターを持つTgマウスの系統化を終えた。今後はこの系統を用いて、心臓や肝臓の損傷実験を行う。 (2) イモリ大規模トランスクリプトーム情報の取得とノックアウトシステムの発展 イモリでは他のモデル動物と比べ、圧倒的にトランスクリプトーム情報が不足し、特に完全長のデータと網羅度が低い。そこで当研究室のこれまで得た情報に加え、国内9箇所の研究機関でコンソーシアムを形成、大規模情報の取得、とりまとめを共同で行い、ほぼ全遺伝子の情報を得ることができた。この成果は次年度に論文化するとともに一般公開の予定である。また、ゲノム支援を受けて得たTSSシークエンス結果からcyclin D1遺伝子等の転写開始点を決定した。一方、CRISPR-Cas9システムによる迅速かつ高効率の遺伝子ノックアウトが複数の遺伝子で達成できた。 (3) マウスにおける肝臓と心臓間での再生能の違いのしくみについて 我々のこれまでの研究により成体心筋細胞には分裂期進行阻害機構があることがわかっている。一方、肝臓再生においては70%切除では分裂するが30%切除では分裂しない。後者における分裂期進行阻害機構が心筋細胞のものと同じか否かを探るため、30%切除実験を確立し、分裂がほぼ起こらないことを確認した。今後は30%切除における細胞周期進行因子の動態を心筋細胞および70%肝切除と比較することで、肝臓と心臓間での再生能の違いのしくみを探る。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記(1)では、F0イモリでの解析は困難であったがマウスも含めTg動物の作製系統化が順調に進行している。 (2)では、本研究の遺伝子解析の基盤となるトランスクリプトームの大規模取得が達成された。また、TSSデータの入手も成功した。また、CRISPR-Cas9システムにより複数の遺伝子で迅速かつ高効率のノックアウトが達成できた。(3)では肝臓と心臓の分裂期阻害機構を比較する基盤の確立に成功した。以上から、順調に進行していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 細胞周期進行遺伝子の発現がマウス心筋細胞では抑制され、イモリでは抑制されない機構 これまでに作製したマウス、イモリそれぞれのcyclin D1 プロモーター+蛍光遺伝子のトランスジェニックイモリでは個体間の発現パターンに大きな違いがあったため、その系統化を進め、均一な発現を示す個体群を確保する。そして心臓や四肢の切除を行い、蛍光遺伝子の発現変化を蛍光もしくはmRNAの定量解析で検討する。また、昨年度作製したマウスのcyclin D1 プロモーター+蛍光遺伝子のトランスジェニックマウスの系統化が完了したのでその発現パターンと心臓損傷時の発現変化を検討する。これらトランスジェニック動物の結果を比較し、再生能の違いがcyclin D1遺伝子配列そのものかその環境にあるのかの確定をめざし、論文化を進める。 (2) イモリゲノム情報の整備とノックアウトシステムの発展 イベリアトゲイモリ研究コンソーシアムで入手した胚、再生芽、心臓等からの大規模トランスクリプトーム、また、ゲノム支援によって得られたTSSシークエンスのデータを整備、解析し、論文を完成する。同時にcyclin D, cdc25遺伝子等注目する遺伝子の基本情報の整備をさらに進め、(1)の解析に役立てる。一方、イベリアトゲイモリの遺伝子ノックアウト技術をCRISPR-Cas9システム等で発展し、その論文も作成する。 (3) マウスにおける肝臓と心臓間での再生能の違いのしくみについて (1)で系統化したマウスcyclin D1プロモーター+蛍光遺伝子Tgマウスで肝切除を行い、蛍光遺伝子の発現変化を(1)同様の手法で検討する。一方、肝臓の小規模再生(30%切除)では細胞分裂が起こらない。この原因を細胞周期調節因子の動態に注目して解析し、心臓と同様か否か、また、異なる場合はさらに何が原因で分裂しないのかを探る。これらの論文化を進める。
|