細胞は個体形成の過程で、単純から複雑に変化をとげる。組織が作られる課程では、個々の細胞が多彩なふるまい(分裂・移動・変形・細胞死など)をし、それらが協調・統合されてグローバルな形の変化を成し遂げる。個々の細胞のふるまいを制御する分子メカニズムは、これまでの研究によって理解が進んできたが、一方で、それら個々のふるまいを統合させて、どうやってグローバルな変化を生み出すことが出来るのか、そのメカニクスの研究は近年始まったばかりである。研究代表者は、ローカルな細胞動態がどのようにしてグローバルな組織へと展開するかを理解する為に、ショウジョウバエ蛹期の雄性生殖器の回転形成に注目した。この移動は、個々の上皮細胞が左右非対称につなぎ替わることで進行することを、実験と数理モデルによって明らかにした。左右非対称な細胞接着面のつなぎ替えは、接着面を90度回転させる為、一旦逆のキラリティに変化してしまう。そのため、つなぎ替えとその後のキラリティ修正を瞬時に起こすメカニズムが必須である。代表者らは、つなぎ替え(細胞接着面の収縮)を引き起こす、細胞接着面に局在したアクトミオシンが、接着解離した両細胞側で、新しく出来た細胞接着面を伸長することに寄与することを見いだした。加えてこの現象には、3細胞接着結合(トリセルラージャンクション)局在タンパク質であるsidekickが関与していることを示した。これらの結果はDevelopmental Cellに報告し、プレスリリースも行った。集団細胞移動のタイミング制御に関与するメカニズムについても、細胞の基底側に存在する細胞外マトリックスの制御が重要であることを示し、論文準備中である。
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