研究実績の概要 |
スクロースの排出輸送体SWEETとスクロースをフルクトースとグルコースに分解するインベルターゼおよび導管液タンパク質(XSP25, XSP24)の遺伝子発現を、無菌ポット栽培のPopulus trichocarpaを用いて解析した。その結果、挿し木苗の地上部の成長は短日条件 2週目に止まり、長日条件に戻した1週目で芽吹き始めた。それに対し、根の成長は長日2~3週目に最大になり、短日に移すと徐々に減少し、低温条件でほぼ完全に成長が止まり、長日に戻すと成長を再開した。これらのことから、根の成長が地上部とは異なる制御を受けていることが示唆された。 導管液成分に関わる遺伝子の根における発現を調べると、SWEETは短日および低温で、インベルターゼは低温のみで、XSP25は短日のみで、XSP24は短日と低温で上昇した。これらの結果から、デンプンを分解して生産されたスクロースは、根において短日・低温で誘導されるSWEETによってアポプラストに排出され、そこで低温で誘導される細胞壁インベルターゼによってグルコースとフルクトースに分解され、XSP24とXSP25は短日・低温により誘導され、冬から春先に導管液中を流れるのではないかと考えられた。また、これらの遺伝子の生理機能を解析するため、XSP24, XSP25, SWEETのRNAi形質転換ポプラや過剰発現シロイヌナズナを作出した。 一方、地上部から地下部への短日情報の伝達機構を調べるため、短日処理したポプラの葉からmicroRNAを調整し、次世代シークエンサーを用いた解析を行ったところ、短日で発現が上昇するmiRNAが複数同定された。それらには、植物ホルモンや器官発生に関わるものが含まれていた。
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