研究課題/領域番号 |
16H04802
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馳澤 盛一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40172902)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物細胞分裂・形態形成 / 細胞骨格 / 画像定量解析 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、シダ植物およびコケ植物において細胞研究の多様な解析ニーズに適した実験細胞株(standard cell line:SCL)を新規に確立し、それらを用いた細胞分裂・形態形成様式の比較解析を行うことで、植物が進化の過程で獲得してきた増殖システムに迫ろうと試みている。具体的には、シダ植物のリチャードミズワラビとコケ植物のゼニゴケに着目し、各植物種において新規の懸濁培養細胞を作成し、分裂増殖の解析に適したSCLの確立を目指す。次に、これらの細胞を用いて細胞骨格などの可視化や独自開発のイメージング画像定量解析を行い、タバコBY-2細胞などのデータと照合することで、被子植物、シダ植物、コケ植物の比較解析を可能とすべく、先ず以下の検討を行った。 1)無菌的に成育したリチャードミズワラビおよびゼニゴケ植物体よりカルスを誘導し、生長のよいカルスをもとに懸濁培養細胞を作成した。植物ホルモンなど様々な条件の液体培地の入ったフラスコへの定期的な移植でシェーカーでの振盪培養が安定した時期を見計らって、移植毎にステンレスの金属フィルターに目の粗いものから順次通して、なるべく小さな細胞集団(fine cell culture)を選抜した。 2)これらの fine cell culture を暫定的な候補とし、増殖速度を早めるべく培養条件を再検討した。具体的には、植物ホルモン濃度(なるべく低濃度に慣らしていく)、振盪培養条件(培養温度、回転速度・半径、液体培地の量、シェーカーの機種など)、ミネラル組成(ベースはMS培地でも追加のミネラル)などである。 3)リチャードミズワラビについて、増殖速度が早く、 かなり fine cell culture であるSCL候補の cell line が得られたので、それを用いて、細胞分裂様式の観察やプロトプラスト作成の検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの機器の故障により一部の計画に遅延がみられたなどの理由で繰越申請を行ったが、全体的には概ね順調に推移していると言える。具体的には、リチャードミズワラビのSCL候補は以前に取得したものより実験的な使用に耐えるものが得られており、ゼニゴケについても一応の候補が得られている。また、それらを用いて、細胞分裂や形態形成の様式の観察やプロトプラスト作成についても検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように得られたSCL候補を用いて以下の点について検討する。 1)シダ植物のプロトプラストの作成と培養系の確立およびそれを用いた細胞形態形成の解析を行う。球形のプロトプラストからの細胞分裂および細胞伸張系の確立を試みる。 2)シダ植物等における可視化細胞の開発を目指し、まずアグロバクテリウムを用いた形質転換を試みる。それが難しい場合には蛍光抗体染色なども試みる。(ゼニゴケについては河内研から分与して頂いた微小管等の可視化植物よりcell lineを作成している。) 3)画像クラスタリング手法を用いた細胞分裂様式および細胞形態形成様式のイメージング定量解析についても検討する。
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