研究課題/領域番号 |
16H04804
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
青山 卓史 京都大学, 化学研究所, 教授 (80202498)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 植物細胞分化 / 表皮細胞 / 転写制御ネットワーク / 脂質シグナル / オーキシン |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナの根毛およびトライコームは植物細胞分化のモデルケースとして精力的に研究されてきた。その結果、それらを含む植物表皮細胞の分化には共通の転写制御ネットワークが関与し、転写因子GRABLA2 (GL2)がそのネットワークの出力装置として働くことが明らかになっている。しかし、細胞分化の運命決定に関わるGL2上流のネットワークが明らかになっている一方で、細胞形態を含む細胞機能の分化につながるGL2下流の制御経路については未だ断片的な理解のままである。本研究では、根毛細胞分化に関わるGL2下流の経路を中心にそれらの制御的役割を解明する。これにより、根毛発生の制御経路全体を明らかにするとともに、植物表皮細胞機能分化の初動における制御機構モデルの確立を目指す。 平成29年度においては主に以下の研究において進展が見られた。GL2の直接標的であるPLDζ1遺伝子およびその関連遺伝子PLDζ2について、それらの遺伝子産物の細胞内機能を調べるために、蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現する形質転換植物を用いた細胞内局在性の解析を行った。その結果、表皮細胞などにおいてPLDζ1の融合タンパク質はトランスゴルジネットワークに局在するのに対して、PLDζ2の融合タンパク質はトランスゴルジネットワークの一部および液胞膜に局在し、それらはトランスゴルジネットワークの一部において共局在することが明らかになった。また、この局在性はそれぞれのタンパク質のN末領域に依存した。これらのことは、PLDζ1とPLDζ2はトランスゴルジネットワークにおける膜交通の制御に関与するとともに、それらは部分的に機能重複している可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度においてはPLDζ1およびその関連タンパク質であるPLDζ2の細胞内機能解析を中心に研究を進め、その細胞分化過程における役割のみならず、細胞内膜交通におけるリン脂質シグナルの役割へと発展している。他のGL2標的遺伝子についても徐々に解析の準備が進んでおり、全体としておおむね順調に進展し ていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降には、PLDζ1、LRL1などのGL2標的遺伝子産物の機能解析、およびLRL1の下流で働く直接標的遺伝子へと解析を進め、最終的にはGL2が統御する植物表皮細胞における分化制御機構の全体像の解明を目指す。
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