研究課題/領域番号 |
16H04805
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福澤 秀哉 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (30183924)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 無機炭素輸送体 / 緑藻 / 光合成 / カルシウムシグナル / 環境順化 / シグナル伝達 / 緑藻クラミドモナス |
研究実績の概要 |
無機炭素センシング経路の制御因子としてCa2+結合タンパク質CASについて以下の点を明らかにした。 1)CrCASがCa2+結合性を持つことを証明した。2)CrCASは葉緑体内のチラコイド膜に局在することを示した。3)CrCASは、CO2応答性遺伝子の中でも細胞膜局在のABC型重炭酸輸送体HLA3と葉緑体胞膜に局在する重炭酸イオンチャネルLCIAの発現を制御することを明らかにした。Ca2+キレーターを細胞培養液に添加すると、本来低CO2条件で誘導されるHLA3とLCIAの発現が抑制されたことから、2つの輸送体はカルシウム依存的に発現が制御されることが明らかになった。 また、Nセンシング経路の調節因子TAR1について以下の点を明らかにした。 1)TAR1タンパク質のリン酸化活性ドメインの発現によりTAR1は自己リン酸化と共に、他のタンパク質をリン酸化する活性を持つことを証明した。2)TAR1の欠損により、酢酸存在下の光従属栄養条件では脂質蓄積レベルが低下するが、酢酸を含まない培地での光独立栄養条件では、逆に脂質蓄積レベルが上昇する事を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に緑藻クラミドモナスから単離したCO2要求性変異株の解析から、葉緑体カルシウム結合タンパク質CASが無機炭素輸送体の発現に必要であることを発見し、炭素欠乏に応答するシグナル因子の論文をPNASに出版できた。
|
今後の研究の推進方策 |
無機炭素センシング経路の制御因子として見出したCa2+結合タンパク質CASについて以下の点を明らかにする。 1)CrCASの局在が細胞外環境によってどのように変化するのかを明らかにする。 2)CrCAS以外に、細胞膜局在のABC型重炭酸輸送体HLA3と葉緑体胞膜に局在する重炭酸イオンチャネルLCIAの発現を制御する因子を変異株のスクリーニングにより明らかにする。Ca2+キレーターを細胞培養液に添加してすると、Ca2+濃度を制限したときに転写レベルが変動する遺伝子と、CrCAS依存的に発現する遺伝子との関係をRNAseq法により解明する。 また、Nセンシング経路の調節因子TAR1について以下の点を明らかにした。 1)TAR1タンパク質によりリン酸化をうける標的タンパク質を推定する。2)TAR1の欠損により、光従属栄養条件でどのような生理応答反応が起こっているのかについて、RNAseq法により解明する。特に、酢酸を含まない培地での光独立栄養条件で、どのようなタンパク質の発現とリン酸化が変動するのかを明らかにする。
|