研究課題/領域番号 |
16H04807
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三村 徹郎 神戸大学, 先端融合研究環, 教授 (20174120)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 二次代謝 / 異形細胞 / 乳管細胞 / テルペノイドインドールアルカロイド / ニチニチソウ / メタボローム |
研究実績の概要 |
植物が示す二次代謝には、一次代謝と異なり、一連の化学反応が一つの細胞内で完結せず、複数の細胞間を中間代謝産物が複雑に移動して進行する、細胞横断型のものが知られている。本研究では、この細胞横断型二次代謝過程を示す代表的な薬用植物ニチニチソウを用い、細胞横断型二次代謝において、各種細胞の代謝分化の全体像を、細胞生物学的観点から明らかにすることを目的とした。1)一連の代謝過程における代謝産物の組織・細胞分布を明らかにし、2)その分布を引き起こす細胞内代謝、細胞間移動機構の解析を進めるとともに、3)それぞれの細胞代謝分化がどのような分子機構で生じているのかの分子・細胞生物学的解析を行う。4)さらに二次代謝において主要な役割を担う異形細胞を中心に、液胞機能の解析を進める。一連の研究によって、多細胞体としての植物において複数の細胞間を横断して進行する二次代謝の実態と全体像を明らかにすることを目指した。 我々は、これまでニチニチソウ茎組織における二次代謝産物の分布が、従来の酵素遺伝子の組織別発現パターンから想定されるものと異なることを、質量顕微鏡や一細胞メタボローム解析で初めて明らかにした。2016年度とその繰越し研究では、細胞が茎より小さいため上記解析技術の適用が困難だった葉組織に、改良した解析技術を適用することで、葉組織においても、茎と同様、これまで想定されていた代謝産物の分布が実際とは異なることを明らかにすることに成功した。 さらに、葉の成長とともに、二次代謝産物の合成パターンが変化することを見出し、遺伝子発現解析と組み合わせることで、二次代謝が空間だけでなく、時間的にも変動していくこと明らかにしつつある。特に、これらの現象に関係する遺伝子の発現を網羅的に解析するため、様々な条件でmRNAの単離を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ニチニチソウの二次代謝の解析は、主に葉組織を使用して進められてきた。本研究開始当初は、細胞の大きさ等の理由により茎組織での解析しかできなかったが、茎組織に適用することに成功した新規メタボローム技術(質量顕微鏡、一細胞メタボローム解析)を改良することで、葉組織の細胞にも適用できるようになり、葉組織においてもこれまで想定されていた代謝産物の分布が実際とは異なることを明らかにすることに初めて成功した。 また、葉の成長とともに二次代謝産物の合成パターンが変化することから、ニチニチソウの二次代謝は、空間的分化のみならず時間的分化も生じていることを見出し、現在その分子機構の解明を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
二次代謝の空間的分化と、新たに見出した時間的分化の両者の分子過程を明らかにすることを目指している。そのための研究推進方策として、 1)まず、空間的分化については、細胞別の単離技術をさらに洗練させることで、より詳細な二次代謝関連遺伝子の発現パターンの違いを見出す。 2)時間的分化については、成長過程で生じる二次代謝関連遺伝子の発現変動を追跡することを目指す。 3)既に、二次代謝過程で働く酵素遺伝子の実体は、そのほとんどが明らかになっているが、その制御過程はまだ良く判っていない。それを明らかにするために、突然変異体の分離を目指す。 4)オルガネラレベルでの二次代謝の機能分化が想定されている。それについて特に重要なオルガネラである液胞と、近年代謝への関与が新たに見出されている核について、その実体の解析を進める。
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