研究課題
植物が示す二次代謝には、一次代謝と異なり、一連の化学反応が一つの細胞内で完結せず、複数の細胞間を中間代謝産物が複雑に移動して進行する、細胞横断型のものが知られている。本研究では、この細胞横断型二次代謝過程を示す代表的な薬用植物ニチニチソウを用い、細胞横断型二次代謝において、各種細胞の代謝分化の全体像を、細胞生物学的観点から明らかにすることを目的とした。本研究では、1)一連の代謝過程における代謝産物の組織・細胞分布を明らかにし、2)その分布を引き起こす細胞内代謝、細胞間移動機構の解析を進めるとともに、3)それぞれの細胞代謝分化がどのような分子機構で生じているのかの分子・細胞生物学的解析を行う。4)さらに二次代謝において主要な役割を担う異形細胞を中心に、液胞機能の解析を進めることを予定した。本年度は、異形細胞の発生過程の詳細を、未熟種子や発芽初期の胚を用いて、蛍光顕微鏡観察、蛍光顕微測定、LC-MSによるアルカロイド含有物量の変化の測定を進めた。未熟種子中の胚において、成熟した個体で見られるものとは異なる青色蛍光性化合物が蓄積していること、蛍光性化合物の蓄積する異形細胞・乳管細胞様の構造が存在していることを初めて見出した。成熟後の種子から取り出した胚では全体が青白い蛍光を放ち、未熟種子中の胚で見られたような蛍光や乳管細胞様の構造は見られなくなったが、その後、発芽後の芽生えの胚軸で見られるものと同様の乳管細胞が観察されるようになった。顕微蛍光スペクトルから、未熟種子中の胚で見られた蛍光化合物は成熟種子中の胚に蓄積しているものとは異なることが明らかになった。LC-MSによる実験からも、成体とは異なる代謝産物の蓄積が示唆され、未熟種子中では種子特異的な代謝が行われており、種子の吸水・発芽の過程で所謂「ニチニチソウアルカロイド代謝」へと切り替わることが示された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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